先日ある患者さんの第一段階の治療が終わりました。
その方は歯科医院が苦手で我慢に我慢を積み重ね、無理してなんとかしのいでおられたそうですが、それも限界になって意を決してのご来院でした。
当初のお口の中全体の歯が重度の歯周病に侵され、残った15本程度の歯の1/3以上がぐらぐらでくしゃみをすれば抜けそうな状況です。 しばらくまともな食事をしておられず「麺類を食べるのがやっと」とのことでした。
こうした場合は、まずは曲りなりにでも毎日の食事ができるようになることが第一段階です。
入れ歯に限らず「痛い」「噛めない」など具合が悪い時の患者さんの判断はどうしても悲観的になります。
そして不満の解消を急ぐがあまり。熟考されないで容易な方法に飛びつかれる傾向があります。
ですからまずは強い不満をある程度解消し、今と先行きに少し安心できて冷静に判断できるようになった状態で今後どうするかをゆっくりご相談することにしています。
どうしてあげようもない歯は抜歯をさせていただき、残った歯に応急的な新しい入れ歯をお入れしましたが、 その翌日には「食事らしいものが本当に久しぶりに噛めました」と喜びのお声が聞けました。 これからが治療の第二段階です。
これで終わるのもよし、もっと快適でしっかりした入れ歯や症例によってはブリッジやインプラントを取り入れた治療の第二段階に入るのもよしだと思っています。
それを決めるのは今だけでなく今後どんな食生活をどんな不自由までなら許容でき、どんな日常生活を送りたいとお考えなのか、また今残った歯の寿命を含めてどうしていきたいのか、そんな患者さん個人個人違う希望や価値観だと考えています。
ここからは私は患者さんが行きたいと思う場所にお連れする水先案内人に徹します。 道中起こりうる色々な事柄、将来行った先で起こりうるリスクやメリット、この治療で手に入れられるものとそうでないものなどをお話しして行き先が決まったらいよいよ一緒に出港です。
ご本人は驚いておられましたが、ご希望される最終目的地によっては食べるものを選ばずなんでも噛み砕くことだって夢ではありません。 この方とは長い旅になりそうですが、これからなにが待っているのかお互いに楽しみになるような旅にしたいと思っています。