はじめに / ストレスと歯 P 1/10

どうして歯科医がストレスを持ち出してくるのかと、不思議に思われるかもしれませんね。
それは歯やインプラント、入れ歯をしっかりと治療し、快適に、そして長持ちさせるには、噛む力以外に歯などに負担を強いては歯の寿命と治療結果がうまくいかないからです。

長期間、持続的な噛みしめる力は、仮に歯と歯を軽く接触させているだけでも、歯に強力な力をかけたのと同じで暴力です。言葉の暴力と同じく、見た目には傷がつかないのですが、確実に水面下で「歯」や「骨」、「歯肉」、さらに「顎の関節」まで、身体を壊していきます。軽い力でも、持続的なものは想像以上に大きなダメージを与えるのです。

こうした持続的な力はどうして発生するのでしょうか?
ストレスやその人のマイナス的(ネガティブ)考え方は悪い方向に行けば行くほど、「噛みしめ」や「食いしばり」につながります。ちょうど明るく楽観的に「ハハーッ」と笑っている時に、歯と歯がぶつかり合っていないことと正反対のことが起きるのです。

この「噛みしめ」や「食いしばり」によって、本来歯を休ませてあげなければいけない時間でも歯に力の負担をかけて歯槽膿漏になったり、歯が痛んだりぐらついてきたりします。
それでもまだ歯に負担をかけ続けると、最後にかけがえのない大切な歯が抜けてしまいます。
歯がなくなるのは虫歯や歯周病(歯槽膿漏)だけでないことをご理解ください。最近の研究で虫歯と歯周病の発症や悪化にそうした歯にかかる余分は力が関わっていることも明らかになっています。

こうして抜けた「歯」の代用として用いる、現在の最先端の医療であるインプラント、手間ひまかけて作り上げてアゴにピッタリ合わせた入れ歯と言えども、残念ながら天然の歯を超えることはありません。
その歯を与えてくださったご両親と神様には勝てないのです。

くどいようですが、現代の科学をもってしても天然の歯を超えるものを作り出せないでいます。その中で毎日の生活に支障がない程度に回復することが治療の目的です。
自分の身体に最もなじみのよい「歯」ですらなくなったのに、そのなくなった原因がある同じ環境に入れるインプラントや入れ歯がうまくいくわけがないと思われませんでしょうか?
真っ新な歯1本新たに作り出すことができない医療に魔法もマジックもありません。
どんなに願っても、どこに行かれても元通りは困難で限度があるのです。
患者さんに環境を変えていただかなくては、歯が長持ちせず治療もうまくいきません。
僭越ながら現在の状況を招いてしまった原因から学んでいただきたいのです。
歯医者はアドバイスはできても、これは私たちにはどうしてあげようもない問題なのです。

医療にはこのような限界が存在します。
しかし多くの方々が現代の医療で何不自由なく日常の生活をお送りになられていることも事実です。
方法を間違わなければそれなりの毎日をお送りになれる状況を創りだす力を現代の医療は持っていると思います。
しかし私たち医療側だけの努力では難しい局面が多々ありますので、患者さんにもご自分の健康のためにご協力頂きたいと申しているのです。そのためにどうしてこうなったのか、どうすれば良くなるのか、そうしたことをご理解いただくためにこの小冊子を書きました。

ストレスや歯ぎしり、食いしばりなどはなかなかご自身でさえコントロールすることが難しいことです。
それをいくら歯の専門家であっても歯だけの問題でない以上、今のお困りを歯科だけで回復することはできません。極端な言い方をしますと、歯に問題がなく歯ぎしりや食いしばりに病気の根本原因あった場合、いかに歯に症状があったとしても本来は歯科の領域ではありません。
これからそうしたことがいかに歯と関連しているのか、どうすれば症状が軽減するのかなどのお話を進めてまいりますが、そうした背景を持つ話だということをご理解いただきたいと思います。

 

 

あなたとストレス / ストレスと歯 P 2/10

この世にはお金や努力で買えないものがあること、人任せで済まないことがあることなどはもうすでに十分にお分かりだと思いますが、無意識に済ませてしまったり誤解をされていないかもう一度お考えになっていただけると歯は助かり治療は本当にうまくいくことがあります。

ストレスを感じているというあなた。あなたは一生懸命生きている人です。素晴らしいことじゃないですか。
だって、不真面目でいいかげんに生きていれば、ガンバることもない訳ですし、ストレスなんか感じるはずがないからです。あなたは、真面目に自分の為すべきことを人より一生懸命やっている人です。人生をガンバっている人です。

一方で会社や仕事がストレスなら、「会社を辞めて仕事を放り出したらいいじゃない」という意見もあると思います。家族や人付き合いがストレスなら、「離婚したりその人と縁を切ればいいじゃない」と聞こえてきそうです。
「いや、そうはできないよ」と思うのであれば、会社を辞めないこと、仕事を続けること、離婚しないこと、その人との付き合いをすることを決めたのはあなた自身です。
そうしない自由もある中でそうする選択をしたのは自分の意思ですから、後はやるしかなくもう他の人や事情のせいにはできません。ここが人生の辛いところですが事実でもあるのです。

だったら、ストレスとうまく折り合いをつけてやっていくしかないのではないでしょうか。
何がストレスになっているのか、どうしてストレスになってしまうのかなどストレスを分析して、その一つ一つに対処する方法をあみ出すか、「えーい」と開き直るしか方法はないようです。

ストレスを生み出す自分の周りの環境と、ストレスを感じる自分の存在があって初めてストレスは成り立ちます。
どちらか一方がなければストレスは存在できないのです。
同じような状況でもストレスになる時とそうでない時があるように、自分をコントロールしたり変えたりするのも一つの方法です。面倒ですがストレスを生みやすい現代に生きる以上、どうやら避けて通れないようです。それともこのまま、イライラ、グズグズとしていますか。

こうした精神的緊張や不安、ストレスは目に見える形のあるものでないだけに厄介です。それらを生んでいるものは何でしょうか。ご自分で生活や思考を振り返り、どこに歪みがあるのか分析しないといつまでたっても解決しないことになります。

ストレスは人を殺すとまでいわれているのですから、健康のためにも、楽しい人生のためにも我慢だけが対処法ではないでしょう。この項目は心が深くかかわった事柄です。臨床心理学的にも深く広い対応が求められるもので本来心療内科などが担当する領域ですが、歯科的側面から治療のため、あえてストレスや心の問題に触れさせていただきます。歯の寿命と治療を目的としていますが、失礼な部分があればご容赦頂ければと存じます。

臨床心理学の立場からいろいろな方々を対象に書いた都合上、ご自分に合致しない部分は飛ばしてお読みいただけると支障が少ないと思います。

 

ストレスと歯 / ストレスと歯 P 3/10

現代はストレスと切り離せない社会です。
社会を細分化して会社やその地域、もっと小さくして家庭、何であれそこに違う人間同士が係わる環境がある、そのこと自体がストレスを生む素地になります。
さらに社会というものは、みんなでうまくやっていくにはどうしても大勢の人間の調整を余儀なくされるものです。だから、社会そのものがストレスを生む要素を持っていると言えるでしょう。

この現象は今に始まったことではなく、太古の昔から人と人の交わる環境において大なり小なり起こってきたことです。しかし現代になって人との距離、個人を重んじる考え方、人を取り巻く情報の多さ、時間や生活、ひいては人生に対する考え方や価値観などが昔とずいぶん変わってきたために、昔よりずいぶんとストレスを感じやすい社会になってきたことは事実です。

このような社会においても、周りを見渡してみるといろいろな人々がいます。周りから見るとずいぶん楽に生きている人と、辛そうに頑張っている人がいます。同じような環境の中でどうしてこんな違いが出てくるのでしょうか。性格の違いだけなのでしょうか。そうしたことを少し考えてみたいと思います。
どうせなら楽に生きる方が楽しいでしょうから、そうした人々からいいヒントをもらえるかもしれません。

1)     同じ状況でもストレスを感じる人と感じない人がいる。
● 身の程をわきまえて物事に程々を知る人と、周りから見ても無理な環境に身を置いて、どう見ても頑張り過ぎの人がいる。

● 感謝の気持ちを持って明るくポジティブに生きる人と、常に不満を他人や物事に向けネガティブに生きる人がいる。

2)    ストレスから逃避しようとする人と、ストレスとうまく付き合う方法を手に入れた人がいる。

あなたはどのタイプの人でしょうか?タイプ別に対処法をみていきましょう。

 

 

がんばり過ぎ / ストレスと歯 P 4/10

同じ状況でもストレスを感じる人と感じない人のタイプを覗いてみましょう。
同じ状況や環境でも人により反応はいろいろです。世の中同じ人間ばかりではつまらないですから、違いがある方が多様性に富んでいいと思います。
しかし、その違いの場所や程度によっては社会という枠の中でうまくいかなかったり、損をすることもあります。世界に自分一人だけで暮らしても面白くないでしょうから、オリジナリティーと調和の絶妙なバランスが必要なようです。
このうまくいく平均的な範囲から逸脱した部分で、他人との摩擦の結果ストレスを作る場合と、逸脱していないのにその人の感受性からストレスを作ってしまう場合があります。

●  身の程をわきまえて物事に程々を知る人と、周りから見ても無理な環境に身を置いて、どう見ても頑張り過ぎの人がいる。

何でもやり過ぎはいけません。過ぎたことで身も心も疲労し、ストレスがかかるのは当たり前のことです。しかしここでやっかいなのは、そうだと本人が気づいていないことが多いことです。

「俺がいなけりゃ仕事はうまくいかん!」「私がいなけりゃ家庭はガタガタになる!」「俺や私がやらなきゃ誰がするの!」と自分に鞭をふるってがんばり、一方でそのがんばりを他人に認めてもらいたい欲求があるのも人間です。その欲求が満たされないとき、不満やストレスは頂点に達します。
がんばらなきゃいけない状況にあるのでしょうが、がんばっているのはその人本人の意思です。自分で決めたことは自分で変えられます。

とある会社の社長さんが、しゃかりきになって会社を大きくしてきました。経験も実績も自負もあります。「俺がいなきゃ!」と思っていたものの、長年の心労がたたって病気になり入院してしまいました。
病院のなかでは思うにまかせず、部下は頼りないし、会社がどうなっていくのか心配で、歯がゆい思いをしていたそうです。しかしいざ退院してみると、会社は入院する前とまったく変わらず順調だったそうです。俺の留守をよく守ったと部下を褒める気持ちと、自分の存在が何だったのかと愕然としたそうです。

普段だめだと思っていた部下も責任を任せれば思いのほかよい結果を出すことがあります。考えようではその社長さんは今まで部下の仕事を取り上げて自分一人で忙しい思いをして、俺が!俺が!と言っていたことになります。思い切って肩の力を抜いてみましょう。意外とうまくいくものです。

また一方で本人の希望でやっている仕事でも、周りから見ると無茶なことがあります。若かった昔と同じようにやっていること自体、身と心に無理をかけていることです。
身と心はつながってバランスしていますから、身が疲労することは楽しんでいてストレスと感じなくとも、心の負担となっていることがよくあります。

無意識でも心の負担は身体の別な場所の不具合としてでてきます。不具合の場所に直接的な問題がないため、理由がわからなかったり、治療しても治らないことになったりします。
詳しくは後で述べますが、入れ歯が合わないとたくさんの歯科医院を転々とされる方や、歯周病でどんどん歯をなくされていく方などに見られる現象です。
筋違いの難題をふっかっける無茶を入れ歯に求め過ぎていませんか?
同年輩の人を平均に考えてみてください。がんばり過ぎていませんか?

 

 

 

 

ポジティブとネガティブ / ストレスと歯 P 5/10

同じ状況でもストレスを感じる人と感じない人のタイプの第二のパターンです。

●   感謝の気持ちを持って明るくポジティブに生きる人と、常に不満を他人や物事に向けネガティブに生きる人がいる。

二人の人が靴のセールスに行ったそうです。そこで彼らは目にした光景に驚いてしまいました。なんとその地の原住民は靴を履いていないのです。そこで一人のセールスマンは「靴を履かない習慣の原住民に靴が売れるわけがない!」とがっかりしたそうです。しかしもう一人のセールスマンは「こんなにお客がいる!」と喜んだそうです。
同じものを目にして感じたものはまったく正反対のものです。二人の考え方、性格の違いが違った感情となって、結果もストレスと喜び、正反対になってしまいました。

あなたを取り巻く状況でも、それを批判ととるかアドバイスととるかで感情はまったく違ってきますね。感情は身体にまで影響します。どちらが心身とも楽な人生で、どちらが得をするでしょう?
性格を変えるのは大変でも考え方は変えられるのです。

厳しい指摘で強縮ですが、良きにつけ悪しきにつけ現在の状況はご自分で作り上げたものです。直接的でなくとも間接的にもご自分の関与がまったくなかったことはないと思います。
物事はたった一つの条件で起こることより、往々にしていくつかの条件が整った時点で起こることが多いのです。現状にいたるまでに何度か問題を回避するチャンスがなかったのでしょうか?

病気や歯科的な問題も同様です。虫歯を例にあげると、たった一度だけ歯磨きをしなかったために虫歯や歯周病(歯槽膿漏)になった人を見たことがありません。ましてや歯をなくすことも、入れ歯になることもないのです。幾度となく繰り返されたり、あなた自身が容易な選択をしてきた積み重ねの結果が今の状況です。中には大切な健康を他人任せにした人もいらっしゃるかもしれません。

私は治療の際、お互いの理解と納得を得るために可能な限りご説明とご相談をしているつもりです。その時、よく耳にするのが「今までこんな説明を受けたことがない」、「治療法にいろいろな選択肢があるとは知らなかった」などの言葉です。こうした機会を持つことができなかったことはお気の毒としか言いようのないことですが、沢山の医療機関がある中からそこをお選びになられたのは患者さん自身なのですから、残念ながらこれもしようのないことなのかもしれません。

 

自分の中の原因 / ストレスと歯 P 6/10

こうして自分が作り上げた状況にもかかわらず人やものに問題があると考えている人がいます。
入れ歯にたとえると、「噛みしめ」たり「食いしばり」を無意識でもする人はアゴの肉(土手)が入れ歯とぶつかって痛くなってきます。入れ歯が肉(土手)にぶつかってきているのではなく、食いしばりなどであなたが力を入れて肉(土手)が入れ歯にぶつかってきているのに、それでも痛みを入れ歯のせいにする人がいらっしゃいます。

本来、肉(土手)は噛む力を支える組織ではありません。無理をして食事の時間だけ噛む力を負担していてくれるだけなのです。肉(土手)は本来食事以外休ませてあげなければいけないものなのです。それ以上の力をかけ続ければ痛むのは当然です。
アゴの土手がペッタンコに痩せるまで歯や土手に負担をかけ、あそこの歯医者は下手だと歯科医院を転々とする方がいらっしゃいます。転々とする理由が歯科医にあって、どこかにちゃんとした入れ歯があるものだと探し回っておられるのです。
残念ながら医療には天然の歯を越えられない限界があり、入れ歯は自分の歯や土手を越えるはずがないのに、どこかにあると信じている人です。

こうして現状へのご理解がなく自分が作り上げた状況は棚にあげられ、入れ歯に過大な期待と無理難題を求めて、「自分は変えない、入れ歯が自分に合わせろ!」と要求する人がいらっしゃいます。その人が入れ歯が悪いと譲る様子もないとき、残念ながら治療を中止せざるをえないことが希にあります。本人には不満とストレスしか残らないし、治療の見通しが立たない以上しようのないことです。矢印を外に向けてないものを探すより、ふと矢印を内に向けてみられると青い鳥の話のように意外な幸せが待っているかもしれないのですが・・・。

こうした傾向は、会社や家庭、他人などを自分の思う通りに動かしてきた人によく見られます。そうさせてくれた周りに感謝のない人のように感じます。入れ歯や治療はそれらとは違う事柄なのに、どの環境においても同じように他人や物事を自分に合わさせようとして、自分の思い通りにならないと不満とストレスを持つ人です。治療費を払ったのだからと、お金を全ての免罪符のように思っておられる寂しい話しもあります。こんなことは極端な例としても、その方々はそういう言動にはご自分ではお気づきなっておらず、いつもと同じように振舞っているだけと思っていらっしゃるようです。

灯台元暗しといいますが、意外と自分のことには気づかないものです。わざとではなく、その人の考え方や性格です。悪意はないのですが、周りが迷惑していることをご存じありません。ご自分のやり方でうまくいかないときはごり押しせず、外から自分を見てみると意外なことに気づかされることがあるものです。

自分でストレスの原因をつくっていることがあるとしたら、解消法も自分の中に見つかります。昨日と違うあなたは、もっと楽な明日をお迎えになられることでしょう。

 

 

周囲からの援助でストレス回避 / ストレスと歯 P 7/10

ストレスから逃避しようとする人と、ストレスとうまく付き合う方法を手に入れた人のタイプを覗いてみましょう。

仕事にストレスを感じている人が仕事をやめたらストレスから解放されるのでしょうか?
収入が途絶えて生活が厳しくなり、別なストレスを背負い込むかもしれませんね。このように仕事=ストレスという単純な発想ではなく、仕事をもっと細分化してその中の何がどんな状況でストレスを生むのか、まずはっきりさせることが大切です。

次にそれに対する対処や行動を適切にすることで、ストレスを回避できる場合があります。
キーワードは「周囲からの援助、気晴らし」「心の緊張を緩和する」「状況を変える能力を身につける」です。
順番にみていきましょう。

■ 周囲からの援助
人に仕事を手伝ってもらう、仕事の一部を誰かに頼む、時間や予算を余計にもらう、他人から情報やアドバイスをもらう、などの物質的援助や、人に話を聞いてもらう、人につらさを理解してもらう、励ましや慰めをもらう、などの精神的援助があります。

 

■  気晴らし
カラオケで思いっきり歌う、人とお喋りをする、スポーツをする、旅行に行くなど人によって様々な方法があります。趣味に没頭するのも効果があります。何が効果的なのかは人によって違いますし、ある人によっては効果的でも別な人にとっては逆効果ということもありますので注意が必要です。

仕事や家庭一筋できた人ほど、「気晴らし」を持っていないことが多く、「何をしたらいいのかわからない」人がたくさんいます。こうした場合、自分の発想でなく他人の発想を拝借してみたり、人がいいという事を手当たり次第に挑戦する人もいます。要はただ座って待つのでなく、自分で環境や状況を変えるポジティブな行動に出てみることだと言えるでしょう。

 

心の緊張緩和でストレス回避 / ストレスと歯 P 8/10

前ページのストレスを回避する方法の続きです。

人は落ち着こうと思えば思うほど反対に緊張してしまうものです。緊張する対象から意識的に目をそむけても、その意識自身が緊張の対象に注意が集中する逆効果を生んでしまいます。
このように心に直接的に働きかけることはなかなか難しいものなのですが、瞑想やヨガなどが心の緊張緩和に有用だと、アメリカでは心理療法として用いられています。これらは、意識を緊張の対象とは違う別のものに集中させることで、緊張緩和を得ているのです。こうした方法には、緊張緩和や感情のコントロール、ストレスへの抵抗力の上昇などの効果があることが研究により確かめられています。

緊張すると脈拍が増えたり、血圧が上昇することからもお分かりいただけると思いますが、心身と言うように、心と身体には相互関係があるために、身体の緊張を取り除くことで心から緊張を取り除く方法があります。

緊張した時に深呼吸する方法はよく知られています。呼吸は自律神経系に影響しますので心身の緊張緩和に効果があります。脈拍もコントロールできますが、訓練が必要ですので、呼吸のコントロールが簡単です。1分間に6~10回位の普段よりもゆっくりとしたテンポで、短く吸って長く吐く、腹式呼吸がポイントです。

日中の活動時間帯の脳波は緊張を示すβ波が大半です。緊張を和らげ、リラックスさせる目的で、α波を多くする音楽やヒーリンググッズがたくさんあります。そうしたものを使うのも一つの方法ですが、ここに簡単に脳波からβ波を減少させる方法があります。それは全身の筋肉の緊張を緩める方法です。

特に顔面の筋肉は感情と密接につながっているため、顔面の筋肉を緩めると簡単にβ波を減少させることができます。感情はすぐ顔に出ますね。これを逆手にとって利用するのです。
体の力を抜き、顔と口、まぶたの力を抜いてください。能面のような無表情をイメージしていただくと分かりやすいでしょう。意識があれこれ考えていては効果がなくなりますから、頭の中を空っぽに、ぼーとしましょう。
気にしない人はどこでも結構ですが、少々みっともない表情になりますから、誰もいないところで一人でやることをおすすめします。おかしな人と思われて、それがストレスになっても困りますよね。

 

状況を変える能力を身につける / ストレスと歯 P 9/10

前ページのストレスを回避する方法の続きです。

ストレス原因に直接働きかけるため、最も効果のある方法です。
例えば仕事の量が多くてストレスになっていたとします。そんな時、人間関係を悪くしないで減らしたり断ったりする方法を考える、人員を増やす体制の構築、または外注にするシステムを作る、など問題を解決するための手段をたくさん持っているほど、ストレス場面で回避ができます。

こうした対処は引っ込み思案の人には苦手なことです。しかし自分の気持ちを表現したり自己主張しないことが、ストレスを受けやすい人間関係に無意識のうちに自分をおいてしまっていることが多くあります。

自分の意見を相手に押し付けるのではなく、相手の気持ちや状況に配慮をしつつ正当な自分の気持ちを伝える方法を練習していくとよいでしょう。人間社会に生きる以上必要なことです。不満やストレスは自分を痛める分、その感情を使った者が負けです。相手はなんともないのですから損な話しです。

今の状況はこちらの気持ちを相手が知らずにやっている事かも知れませんし、自己主張しないために周りからはよくわからない人だと思われていたのがこちらの気持ちがわかって返って相手との人間関係がよくなることもあるのです。

しかしあなたがストレスを回避したくて自己主張することが、相手のストレスになるようではストレスの応酬になってしまいますので、くれぐれも相手の立場や感情、状況を判断してあげてください。両者が一方的に言い放つのではなく、話し合うと意外と自分も相手もお互いが理解できて、今までのストレスがどこかにいってしまうなんてことがよくあります。
人に話すだけでも楽になることがありますね。状況を変えようとする勇気を持ってください。

 

あとがき / ストレスと歯 P10/10

臨床心理学の立場からいろいろとお話しをさせていただきましたが、内容が心に属する部分で個人の非常にデリケートな事柄なため、どこまで立ち入っていいのか、失礼にあたりはしないか、お話しの仕方が非常に難しい、でもこれはお伝えしておきたい、これが書いた実感です。

しかし当たり障りなくオブラートでくるんでしまうと焦点がぼけてしまうと考えて、あえて書かせていただきました。全ての話しがご自分にピッタリとしたものではないでしょうし、ご理解いただきやすくするために実例を交えてお話ししましたが、返ってシンプルでなくなったきらいもございます。
これもあれも治療を成功裏に終わらせるための、情熱のなせる脱線と大目に見ていただければありがたく存じます。
ここまで忍耐強くお読みくださってありがとうございました。
あなたのご協力があれば歯と長くお付き合いいただけ治療も百人力です。一緒に前に進んでいきましょう。
きっとあなたには、明るい明日が待っていると確信いたしております。