おわりに

人生は長い道程です。そしてその道中には、陽光に満ちる日もあれば、風雪に心身のシンまで凍てつく日もあります。
長い道程は老化と消耗を意味し、愛情と補給を怠れば道半ばで倒れることになってしまいます。しかしご自分の人生やお身体に疑問や興味を持つ人は、愛情と補給を考える人です。
この本を手に取られたあなたは、きっとそういう方なのでしょう。

ご存知の通り60年の人生で再び生まれた干支に還ることから還暦と申しますが、昭和20年代まで人生は50年でした。当時は還暦を迎えられること自体大変幸福なことだったのです。
還暦を人生の区切りとして、また赤ん坊として生まれ変わってそれ以降の第二の人生を歩むという考え方があります。以降の人生は正しく生きて来た人へのご褒美なのだそうです。
この分別も経験もある赤ん坊、ご褒美の第二の人生を我慢や忍耐でなく楽しく謳歌したいものです。

ここまで人生を歩んでこられたこと、そのこと自体が誇らしいことです。
自分の一生は何の、誰のための人生だったのでしょうか。
何をもって幸せとするか、それは人によって様々かも知れませんが、言うまでもなくそれらすべての基本は「健康」です。

入れ歯がガタガタして食べるものを選ばざるを得なかったり、喋るのにも一苦労。
口元も貧相になってしまい、身体のあちらこちらに症状がでてつらい人生を余儀なくされている。
こんな方々が大勢いらっしゃいます。
人生いつも下がってくるのを気にしなくてはいけない靴下より、履いていることを忘れるくらい自然で自分の思い通りに動ける靴下のほうが快適です。

丈夫な歯がたくさんあった時代には想像すらできなかった、「お新香をコリコリ食べてみたい」「大好きなお煎餅をバリバリ食べてみたい」「人と同じものを食べてみたい」こんな簡単な要望すら満たせない人生が豊かだとは思えないのです。

しかしテレビからは入れ歯の安定剤や肩こりに効く薬のコマーシャルが毎日流れてきます。
商品を必要な人が存在し、商品が売れるから企業は何千万円もだしてコマーシャルを流すのですから、大変たくさんの人が困っておられるのでしょう。
ガタガタの入れ歯を我慢しながら入れ歯とはこんなものとあきらめてしまわれたのでしょうか。
歯一本くらいどうにかなっても他にまだあるし、これでも十分かめて食事も取れるから取り急ぎ手当てもすることはなかろう。そう考えていらっしゃるのでしょうか。
それとも、この入れ歯でも食べる物を選べば、何とか食べられないわけでもない。
だましだまし使えば何とかなるとお考えなのでしょうか。

そうした方々がいらっしゃる一方で、快適な入れ歯と楽しい人生を取り戻した方々もいらっしゃいます。
この両者の違いは時間や経済的な問題よりも、本当に大切なものは何か、今まで何を大切にしてきたのか、これからの人生をどう歩むのか、そんな問いと答えなのだと思います。

長い人生には幾つもの転換点や転機があります。
これが転機とは思わず選択してきたこともあることと思います。
「健康」についても同じです。
入れ歯や歯に関するトラブルは過去にあなたが選択してきた、またそう選択させた「考え方」の結果なのです。何を基準に選択してきたのでしょうか。その基準は正しかったのでしょうか。
今が幸せであればその選択は正しかったことになります。

人生は長いようで短く、短いようで長いものでもありますが、どうやら人生は歳と共に加速度がつくようです。人は往々にして、いつでもできる事は成し得ず、今しかできない事を成します。
身体も人生も限りあるものですから、行動を始める時期で結果は大きく違ってくるものです。
今ある現状は過去の人生の集大成です。過去の結果が現在なら、現在の結果が未来なのです。
今の選択や行動が今後の人生を決めてしまうかもしれません。
たった一度きりの人生、今までがんばってきたのですから今を快適に豊かに送りたいものです。
どなたにも豊かな人生を送る権利もチャンスもあります。そんなに難しいことではありません。
人生を我慢したり、あきらめたりせず、ちょっと勇気を出して一歩踏み出せばいいのです。

たかが「歯」、たかが「入れ歯」、たかが「インプラント!」とお思いになられるかも知れませんが、そのために「心と人生の豊かさ」を捨ててしまうのはあまりにももったいないと思います。
「歯」のかみ合わせが、まさかそんなことに関係しているのか!
入れ歯もインプラントも捨てたものではないな。
本書をお読みになってそう思っていただければ幸せです。
何十年もあなたを支えてきてくれた身体に「ありがとう。そしてこれからもよろしくね」と声をかけてあげて欲しいと思います。
この本をお読みになり一つでも思い当たることがあれば今すぐ行動していただきたいと思います。
長い道程も最初の一歩から始まるように、幸せな人生への一歩を踏み出され、豊かな人生に向かってご一緒に第一歩を踏み出そうではありませんか。

高岡歯科医院院長 高岡周一