転勤先でいい歯医者さんと出会うために

はじめに

先日中年の女性の患者さんがはじめてお越しになられました。 半年以上も歯のお困りがあったということです。
「どこの歯医者さんに行ったらいいのかわからず困ってたの」 「歯医者さんの入り口の前までは行くんだけど、決心がつかず何回そのまま家に帰ったことか・・」「歯医者さんって、敷居が高いのよね~」とおっしゃったのです。

はじめてお越しになられた患者さんからよく同じような言葉を耳にします。 あなたもそんな感想をお持ちになられたことがありませんでしょうか。

何を隠そう、実は私も歯の治療を受けるのは大の苦手です。
私も歯が悪くなったらどこの歯医者さんに行こうか迷ってしまうでしょう。 自分のからだを安心して任せられる歯医者さんをそう多くは知らないからです。 その少ない歯医者さんにも得意・不得意があってはなおさら迷います。

今度は他の歯医者さんから移ってこられた患者さんがよくおっしゃる不満です。
「治療内容や、治療後の口の中がいったいどうなるのか不安だった」「治療方針がよくわからない」「治療に納得ができない、説明もないく急に歯を削られた」「こっちの話をよく聞いてくれないし、治療の説明がない」などが代表的です。

共通するのは、コミュニケーション不足、説明不足、時間と手間不足です。
健康保険ではこうしたことに時間をかければ医療機関は赤字になる仕組みになっていますから事情は理解できても、患者さん医療機関双方にとって決していいことではありません。 こうした不満や不安も、また歯医者さんの敷居を高くすることにつながっているようです。

あなたの歯医者さんを選ぶ基準はなにですか?
スタッフの応対やサービスがいいことでしょうか?
キレイな、そしておしゃれなクリニックであることでしょうか?
それともやさしいスタッフや歯医者さんであることでしょうか?
痛くなく、治療が早いことでしょうか?
近所で通うのが便利、いつでも診てくれるからでしょうか?
混んでいるからきっと評判がいいんじゃないかと思っているからでしょうか?

どれもよく聞く話ですが、大事なことが二つ抜けています。
それは治療の中身と、歯の寿命です。当たり前のことですが、歯医者さんは歯を健康にしたりその健康を維持するためにあります。 どこの歯医者さんでもやっていることは皆同じなのでしょうか?
あなたの周りにいろいろなお店や企業があると思います。 大量生産された工業製品を除けば、同じようなものを扱っていてもその中身が同じだとは思っていらっしゃらないでしょう。
歯医者さんも同じです。

治療の内容もそうですが、さらに医療に対する考え方など同じところは一つとしてないでしょう。
しかし、この部分は先ほどの一般的にいわれている歯医者さんを選ぶ理由のように、目に見えること、からだで感じられること、ではありません。だから余計に判断が難しいのです。ホームページを見てわかることではないし、正当性に疑問のある口コミサイトでもわかりません。

以前に母が歯で困ったときに相談を受け、実家近くにある大学の同級生の歯医者さんを紹介したことがあります。 通院の距離と時間を考えてのことでしたが、結果的には私が全部治療しなおすことになりました。
その当時は母もまだ元気だったので上京して治療が可能でした。 しかし最近になって歯が一本割れて治療が必要となったのです。困りました。もう高齢者となって上京する元気がないのです。実家近くの母にあった歯医者さんを探さなくてはなりません。
過去の経緯がありますから、知った歯医者さんだからとか、評判がいい、だけでは不安です。外見やうわさからは治療の内容やその歯医者さんの考え方がまったくわからないからです。 本当に困りました。歯科医ですら困るのですから、転勤先で新たな歯科医院を探すあなたもきっと同じ思いをお持ちなのだと思います。

歯医者さんが苦手なあなたはどこに行けばいいのでしょうか。
歯のことで苦労しているあなたなら、心から信頼できる歯医者さんに一日でも早く出会いたいと思っておられるかもしれません。 ホームページではいいことしか書いてないし、星の数ほどある歯医者さんの看板や外見、うわさだけではその内容までわかりませんね。私も母のことで同じように悩みました。

NHKに脳科学者である茂木健一郎さんが司会するプロフェッショナルという番組があります。その中で毎回出演者に「あなたにとって、プロフェッショナルとはなに?」と質問されます。
いろいろな人々が、ご自分の立場からお答えになっておられます。
歯科医である私が答えるとすれば、プロフェッショナルとは「どんな場合でも基本に忠実で高水準を維持すること」です。
新しい技術や治療だけでなく、日常臨床においてもその基本がその時の状況や気分、相手を問わず、いつでも「高いレベルで、コンスタントに、確実に、正しく行われる」ことが大切です。
しかし歯科以外の何事においても基本を均質に、また忠実に守り続けることは意外と難しいものです。省略や急ぎとは正反対に時間も手間もかかり、そして継続した情熱も必要です。
またニュースや評価につながるようなはなばなしいキャッチフレーズ、最先端などの目新しさもありません。
治療の、いや歯の寿命の屋台骨であるこの部分が、患者さんと歯医者さん双方からあまり評価されにくい・・・これはとても残念なことです。そして歯医者さん選びに最も優先しなければならない項目なのに外から伺い知れない部分でもあります。

歯科医院は歯が悪い人が来る所と一般的には考えられています。
しかしこの小冊子は、実は「歯の悪くない人」に向けて書いています。当院で治療を終わられたあなたの健康と今のいい状態を転勤先でも維持し続けるために手助けしてくださる歯科医院が必要だからです。
もし今あなたの歯に問題があったとしても関係のない話ではありません。近々歯の治療が終わったら、あなたは「歯の悪くない人」になるのですから。

歯を治療するのはもちろん大切です。しかし当たり前のことですが、それ以上に歯を悪くしないことのほうが重要です。 歯科治療では歯は元通りには戻りません。修理をするに過ぎないからです。 現代医学の粋を集めてもご両親からもらったたった一本の歯にかないません。これが「歯科医は歯を治す職業でなく、歯を大切にする職業」だと私が思う理由です。
「歯を大切にする人」にこそ維持するためにもっと歯医者さんに行っていただきたいのです。

この小冊子をお読みになって、転院先であなたにとって最適な歯医者さんを選ぶ基準を作ってください。そして歯が悪いからでなくあなたの歯を守っていくために歯医者さんをもっと有効に利用してください。
年齢の齢の字に歯が使われているように、昔より人生が長くなった今、歯はとても大切なものです。年齢と共にいろいろな欲が薄れてきますが、食欲だけは最後の日まで残ります。豊かで楽しい食生活を送り続けるためにはどうしてもしっかりとした歯が必要なのです。
一日でも長く、あなたの歯とおつき合いいただきたいと思います。


第一章 私が歯科医になろうと思ったのは・・・

あなたは歯医者さんに対してどんな感想をお持ちでしょうか?
私の両親は歯科医ではなかったため、大学に入るまでは私はあなたと同じようにほとんど歯科のことは知りませんでした。 当時の私の歯医者さんに対してのイメージは、怖い、痛い、不安・・・と、いいイメージは持っていませんでした。 歯が悪くなってはしきいの高い歯医者さんのドアをいやいや開けて、独特の臭いと音、嫌な空間・・・歯を磨くことを怠ったと自分を責める気持ち・・・
また治療については無知だったので、すべて歯医者さん任せでした。

私が中学生の時に歯が痛んで歯医者さんに行ったときのことです。
大したむし歯でもないように思えたのですが、先生から抜歯を告げられました。 歯のことはまったくわからないのでしぶしぶ助言に従いましたが、今から考えるとその当時の医療レベルを差し引いても、どうしてあの歯を抜いたのだろうかと理解に苦しみます。
そして歯を抜いた後は、血のついた氷のう片手に待合室で痛みに耐えていたことを昨日のことのように覚えています。 現在の自分ならつらい痛みもなく治療できたであろうに、それどころか他に選択肢はなかったのだろうか?
当時はそんなことすら考える余裕と知識がなかったのです。

あの苦手な歯科をもっと快適で、いい治療を十分な説明と納得の上にやりたい。
そういった気持ちと小さい時から手先が器用だといわれてきたことが、歯科を自分の道だと考えるようになり現在にいたっています。 ですから今でも人一倍痛みと苦痛には敏感で、歯を抜くのは最後の最後のそのまた最後と考えるようになりました。

第二章 話してください、あなたの不安や不満!

冒頭にお話ししたように、歯科医院には怖い!つらい!痛い!などの不安と不満がつきまとうと、初めていらっしゃった患者さんから伺うことがあります。
さらに治療内容によっては治療費が高額になると、さらなる不満がつのります。
そしてやっと治療が終わり、しばらくするとまた歯が悪くなる。
むし歯になっては治し、治してはむし歯になる、その繰り返しがずーと続く人生・・・
治療するたびに段々銀歯と神経のない歯が増え、そして歯を失い入れ歯がどんどん大きくなってくる・・・
どこかでこの悪いサイクルを止めたいのだが「歯を丁寧に磨くしかない」、「遺伝的に歯が弱いからしようがない」、そう思ってはいませんか?

「歯のことはよく知らないから任せるしかないのだけど、治療方針は自分にとって最適なのか?」
「他に方法はないのだろうか?」
「歯をたくさん削られたくない!」
「どんどん少なくなっていく自分の歯や歯質を少しでも残したい!」
「自分の口の中がこの先どうなっていくのかイメージできない漠然とした不安・・・」
どれもごくごく当然の不安で、あなたの不安や不満は当たり前のことです。昔の私もそうでした。

何事もそうですが、わからないこと、知らないこと自体に不安が付きまといます。これはごく自然な人間の感情です。
ですから、先ほどお話したようなご説明や、ご希望や不安なことのヒアリングは欠かせないのです。その時間と手間を患者さんと歯科医両者とも惜しむべきではありません。
私の中学生時代より現在は変わっているといっても、いらっしゃった患者さんのお話からすると、まだまだ病状の詳しい説明だけでなく、十分な選択肢の説明も多くされていない印象があります。
また治療方針を一方的に告げられ困惑した方がお見えになることからしても、当時からそう大きく前進したとはいえないのかもしれません。 どうしてかけがえのない大切な歯の行く先を、専門家とはいっても他人が決めてしまうのか、そこがわかりません。

さらに治療した後の問題や治療しなかった場合の問題、多くの選択肢のそれぞれの長所と短所など、たくさんの情報が抜け落ちている感想を持っています。
また患者さんと歯科医両者のエネルギーはほとんどが治療だけに使われ、病気の予防や、未病(病気の一歩手前の状態)の解消や、歯を長持ちさせるためのケアにほとんどエネルギーは向けられていません。
お一人の治療時間を短くし、たくさんの患者さんを拝見しなければ医院経営が成り立たない健康保険というルールの中で行われていることが背景にあるとしても、これは患者さん歯科医両者にとって残念なことです。

第三章 今までの歯の常識と間違い

さて、ここでちょっと質問です。
次の文章の中で正しいと思うものはどれでしょうか?
「歯医者さんはむし歯や歯周病を治療するためにある」
「むし歯になったら歯を削らなければいけない」
「むし歯になりやすい体質だから、歯磨きをがんばってするしかない」
「むし歯に冷たいものがしみる時は歯の神経を取らなければいけない」
「セラミックなど高額な治療をすれば歯は長持ちする」
これらは一般的に常識としていわれている文章です。あなたは正しいと思われますか?
答えは、実はすべて間違いです。

○ 歯医者はむし歯や歯周病を治療するためにある?

これとは正しいと思われるでしょう。確かにむし歯などにかかってしまったら治療が必要です。 しかし、歯医者さんはそれだけのために存在するのではありません。あなたの歯を守るために存在するのです。
病気から歯を守ることがあまり行われていなかった本当の理由は、健康保険は予防が適用外であるため、予防が認知されにくかったことと、それに過去にはむし歯が多かったので治療だけで手一杯、 お互いに歯を守ることにまで手が廻らなかっただけなのです。

事実、欧米では予防が歯科医院の仕事の大半を占め、おかげでスウェーデンのむし歯の発生率は日本の1/3です。削っては詰め、詰めては削る状況ではなくなっています。
80歳で残っている歯の本数は、日本人が8.8本、アメリカが17本、スウェーデンが25本、日本は何と数分の一しか残っていません。厚生労働省は何とか最低限噛める本数として80歳で20本の歯を残しましょうという8020運動を何年も前からキャンペーンしていますが一向に上向いてきていません。これで先進国と言えるでしょうか?
どうしてこんな結果になっていると思われますか?
その答えは、アメリカやスウェーデンの定期検診やメンテナンスなどのクリーニングケアに通う比率にありました。
アメリカが80%、スウェーデンが90%に対して日本はたったの2%しかありません。
歯科医院に訪れる目的が日本は治療なのに対して、歯と口の健康の維持のためにケアに訪れる場所になっているのです。 彼らの言葉を借りれば、 「日本人は世界で最も歯を磨く人種の一つであるのにどうしてそんなにむし歯や歯周病になるのか?」といわれています。
歯医者さんを治療の場としてでなく、予防の場としてケアやメンテナンスをするために訪れる、それが理想なのです。


○ むし歯になったら歯を削らなければいけない?

これも間違っている気がしませんね。しかし、ちょっとでも歯が黒くなったら歯は削って詰めなければいけないことは現在ではありません。
歯科医学も進歩しています。 むし歯の正確な診断には見た目だけでなく、レントゲン撮影や、最近ではレーザーを使った最新機器での診断もあります。 むし歯が初期の段階であればむし歯リスクを下げることで、黒く見える歯の溝も削らずにすみます。
一度削った歯は戻ってこないので慎重な対応が大切です。 そのためにお勧めするのが次にお話しする、あなたのむし歯リスクをまず知ることです。


○むし歯になりやすい体質だから、歯磨きをがんばってするしかない?

むし歯になる理由は、人それぞれ違います。
歯磨きだけでむし歯を予防できるほど簡単でないことが、最近の研究からわかっています。科学が進歩して、むし歯について以前よりかなりわかってきました。 むし歯の予防方法も進化しています。 リスクの高い(むし歯になりやすい)人と、リスクの低い(むし歯になりにくい)人では今後取るべき対応が違うのです。

だ液を調べる痛くない簡単な検査で、あなたのむし歯リスクを調べることができます。 そしてその検査結果から人それぞれ違う問題点を洗い出し、あなたにピッタリあったむし歯予防プログラムをご提案することができます。
毎日しっかり歯磨きしていてもむし歯になる人と、熱心に歯磨きしていないのにむし歯にならない人の差がこのだ液の中にあります。 家系的にむし歯になりやすいとあきらめるのは、現在では間違いなのです。


○ むし歯で冷たいものがしみる時は歯の神経を取らなければいけない?

以前は当然のことのようにいわれていました。どこが間違っているのでしょうか。
現在では神経の中までバイ菌が入り込んでいなければ、3Mix-MP法によって神経を取らずにすむことがあります。
おかげで歯の神経は生きたままですから、厚生労働省の統計では神経がない歯より歯の寿命が、なんと5年から10年も長くなります。 さらに歯全体を銀歯がかぶることを避けることができます。 銀歯がピカピカ光るのはどうみてもキレイじゃないですものね。 こんないいことだらけの治療を受けない手はありません。
まだどこの歯科医院でも取り入れている治療ではありませんので、 こんな症状の場合はかかりつけの歯科医院で実施しているかお尋ねになられるといいでしょう。


○セラミックなど高額な治療をすれば歯は長持ちする?

確かにセラミックは優れた材質です。 腐食せず、アレルギーも起こさず、美しさが長続きしますし、からだと一番なじみ のいい材質です。これに異論はありません。

わかりやすくするために身近なものに例えてみましょう。 おいしい料理には、新鮮な食材と腕のいい板前さんが必要ですね。 セラミックは食材と同じく材料に過ぎません。
それだけでおいしい料理にはならないのです。 どう食材を生かし、だしや調味料、火加減など いろいろな板前さんの腕と経験がものをいいます。

その板前さんの部分を歯科治療でいえば、歯と人工の歯がピッタリ合っているか、歯のかみ合わせ、他の歯や口の動き、さらに身体と調和しているか、 などたくさんの事柄が揃ってはじめて快適で具合の良い治療となります。 その結果、歯が長持ちするのです。
こうしたことは眼に見えないため、お互いにどうしても軽んじられやすいのですが、このソフトの部分が非常に大切です。 手間も時間もかかります。 実は、ここが歯科医の腕の見せ所です。

ですからこの手間と時間を惜しんだセラミックでは不足なのです。 「いいものは高い」、「安いには理由がある」は世の常ですが、 「高いからいい」とは限らないのです。


第四章 あなたはどちらを選びますか?

私は今までに、歯のかみ合わせ、入れ歯やインプラント、ホワトニングなどの審美、アンチエイジングなどについて何冊かの小冊子を書いてきました。
これらは不安がつきまといがちな歯科治療や病状のご説明と、日常できる限りご説明しているつもりでもご理解いただけていない部分があるかもしれないしれませんし、 そして医療の原点である相互理解に役立てたいとの想いから、通院されている患者さん向けに書いたのものです。

しかし今回私がこの小冊子を書いた理由は、転勤などで当院を離れる方がどういう視点で新たに歯医者さんを探すか、また 病気などのマイナスを取り除く歯医者さんとの関わりだけでなくて、もっとプラスになるために、 歯医者さんと関わっていっていただきたい想いからです。

もちろん病気や不具合の治療は大切ですが、治療が終わって「はい、それでおしまい」でなくて、そのいい状態を維持していくお手伝いを次の歯医者さんに依頼していただきたいのです。
病気になって何かするのではなく、患者さんと歯医者さんが協力してケアをすることで、 病気になりにくいからだを維持して、美しいお口で、快適な人生を送れることが生活の質を向上させると思っています。

本当に「豊か」ということはお金や物を多く持つことでないと考えています。病気になっては手に入らないのではないでしょうか。 予防やケアは治療のように多くの費用はかかりません。
「悪くなっては治す」の繰り返しよりずっと経済的です。 そして将来、歯は確実に多く残ってくれていることでしょう。 選ぶのはあなたです。なにを基準に選びますか?


 

第五章 では具体的にどうしたらいいの?

医学も日進月歩です。昨日の常識が今日の非常識になるような進歩や革新が起こっています。この進歩の恩恵を受けて、一日でも長くあなたの歯を守っていくためにお勧めすることがあります。
第一はあなた自身を任せられるあなた専属の歯医者さんと歯科医院を、主治医として持つことです。
この選択基準は冒頭にもお話ししたように大変難しく、決定打はありません。 一ついえることは、あなたが歯医者さんの診療哲学のようなものに共感できるかです。
そしてあなたのお困りに対して、いくつもの選択肢を提示できるだけの幅を持っていればさらに安心です。 最初はホームページやパンフレットなどの印刷物などで歯医者さんを絞り込み、 その後は実際に行ってみてよく話しを聞いてみることをお勧めします。 双方ともにすぐに治療に取り掛かるのは考えものです。 納得してから始めてください。

信頼できる歯医者さんに出会ったなら、 あなたの不満や不安を正直に話してみてください。
黙っていてもわかってくれると考えるのは得策ではないでしょう。 コミュニケーションは一方通行では成り立ちませんので、 あなたの声も必要なのです。

こうして決まったあなたのかかりつけの歯医者さんなら、 あなたの過去の状況や現在までの経過、 そして何よりもあなた自身をよく知っているのですから、 あなたの歯を大切にしてくれると思います。
あなたのその時の状況にあった最適な方法をアドバイスしてくれるでしょう。


第二はよりよい治療を受けていただき、 そして病気にならない身体を手に入れていただくことです。
現状より一段上に登るために、最初の一度だけはしっかりとした治療が必要なこともあるでしょう。その時は時間と費用がかかるかもしれません。ですがこれからの人生を送るために必要な投資とお考えいただければと思います。健康や歯はそれを支える大切な資本だと思います。

その時には、この世に選択肢のないことはまずありませんから、 多くの選択肢の中から長所と短所をよくお聞きになり、 ご自分で決められるレベルになるまで説明を受けられなくてはなりません。
そしてわからないことはそのままにしておかないで、 必ずすぐにお聞きになることです。 あなたが理解できないことは先に進めるべきではありません。 何といっても治療の主役はあなたなのですから。


第三は、日頃のあなたのケアと定期的な歯医者さんのケアであなたの大切な歯を守り、美しく快適な毎日、豊かな人生をお送りいただくためにうまく歯医者さんを利用されることです。

治療の場としてでなく、予防とケアの場としてです。 歯が悪いから歯科医院へ行くのではなく、 一年に数回、自分自身のケアに歯科医院をうまく利用することです。 何もないから、また何も起きないようにするために歯科医院へ行く、それが理想です。

むし歯や歯周病(歯槽膿漏)からあなたの歯を守るには、 当院ではメインテナンス(医院によってはPMTC)と呼んでいますが定期的なクリーニングが欠かせません。 普段手の届きにくい隅々まで、きれいにクリーニングしてもらうことをお勧めします。
これはけっこう気持ちのいいものです。 健康が手に入るだけでなく、茶しぶなどの歯の汚れもきれいさっぱり取れます。 そのためには、歯科医院が「歯のクリーニングに来たよ!」と気軽に訪れることのできる空間であって欲しいと思います。


最後に治療費のことについてお話します。
先ほどもお話ししたように、歯科も世間と同じく「いいものは高い」、「安いには理由がある」 はある意味で事実です。 それだけの手間と技術を使い、確かなものを手に入れるためには、 応分のご負担にはなってしまいます。
ですが治しては悪くなりまた治すことを繰り返すことと比較すると、 一度しっかりした治療を受けてそれを維持するほうが、 人生という長いスパンで考えればトータルでは、経済的にも節約になるといわれています。

歯が確実に長持ちすることを考えると、 二度と手に入らないかけがえのない歯を守り、快適で豊かな人生を送るための、 あなた自身への投資とお考えいただきたいと思います。
そしてそれを手にした後は、定期的に歯医者さんをご自身をケアする場所としてお使いいただき、末永くあなたの歯と人生を歩んでいただきたいと思います。


第六章 さあ、一歩前へ!

ここまでお読みくださってありがとうございます。
少しでもあなたのお役に立てたでしょうか。
どのような長い道のりも、最初は一歩から始まります。 まず最初の一歩を、あなたの不安と不満を解消することから始めてください。 そのために歯医者さんへ「歯の相談をしにいきたいのですが」とお電話してください。 話を聞くだけでも結構です。一歩前進です。


転勤などでお引越しされる予定の患者様から「引っ越し先でいい歯医者さんをご存じありませんか?」とよく聞かれます。しかし治療内容まで知った先生が引越し先の近くにいらっしゃればいいのですが、 残念ながらそう多くの先生を知りません。
そこで雰囲気やうわさなどを当てにするのではなく、 その患者様自身の目でご自分に最適の主治医を決める手助けになれば・・・
そして治療のためだけでなくあなたの歯を長く守っていくために、 じょうずに歯医者さんを利用していただきたく書いた小冊子です。
ご参考になれば幸いです。
あなたの歯とからだを守ってくださる先生にお出会いされることを心より願っております。
高岡歯科医院 院長 高岡周一