歯を削らない!神経を取らない!

できるだけ歯を削らない!

歯の寿命はどんなことで決まると思われますか?歯の手入れや遺伝とお考えでしょうか。
むし歯や歯周病、歯のかみ合わせや残った歯の数と位置などのお口の状況、食いしばりや噛み締め、歯ぎしりなどの習慣なども寿命を決める重要な要素です。

もう一つ重要な要素があります。それは治療です。
よく銀歯が外れたとお越しになられる方がいらっしゃいます。歯を拝見すると歯と銀歯の境目に虫歯ができて外れてきたことが大半です。どうして虫歯になったのでしょうか?
その理由は歯と銀歯がピッタリ合っていないためです。両者のあいだに微細な隙間があるため、そこに食べかすが残って虫歯を作ったのです。

過去に治療した場所は歯と歯の間や、歯の溝が多くありませんか?そこは歯ブラシが届きにくく掃除が不十分になりやす場所です。掃除が不十分になるため食べかすを栄養源にするばむし歯原因菌が活発になりむし歯ができるのです。ばい菌に食べかすという餌をやらないために、歯と銀歯の微細な隙間を毎日365日確実に磨き残しなくお掃除し続ける自信がありますか?
私や掃除のプロである歯科衛生士でも毎日満点を取り続ける自信はありませんので、掃除がしにくい場所(弱点)は持ちたくありません。隙間をなくして掃除がしやすいようにする方が得です。

今までの歯の治療を思い出してみてください。なくされた歯やかなり傷んで不安をお持ちの歯は、何度も治療を重ねた結末が今の状態ではありませんでしょうか?同じ人の口の中にある一度も治療を受けたことのない歯は今でも無傷のまま悪くなっていないのではありませんでしょうか?
そうなんです。歯を削って治療を受けるからまた次の治療が必要になりそれを繰り返すから最後に歯を失うのです。

この負の連鎖を止めるには虫歯になった原因から考えると、多少費用をかけてでも歯にピッタリ合った治療を受けてそれ以上の病気を作らない、その結果歯をまた削らないで済ませることです。
その時は負担かもしれませんが、そうしないで同じ歯を何度も治療することを考えれば、歯の寿命にも、時間的にも、経済的にもそちらのほうが得だと思います。

多くの方が歯の治療を外見でお決めになられますが、いかに白くきれいなセラミックでも歯にピッタリ合っていなければまた虫歯になって歯を削らなければならなくなります。これでは歯が長持ちしません。外見や材質も大切ですが、歯の寿命がもっと大切だと私は思うのです。セラミックだけでなく人工の歯は、作り方でピッタリ合うかどうかが決まります。材質や費用で決まるのではなく、ピッタリ合わせるために顕微鏡で見ながら精度よく丁寧に作るため時間や手間と経費がかかるためどうしてもご負担が増えてしまうことをご理解頂きたいと思います。

しかしもっと歯と身体にとっていい方法があります。それは歯を削らないことです。毎日歯を削っている歯科医がいうのも変ですが、そうしている立場だからこそそう断言できるのです。
歯は削らないほど長持ちします。削った歯ほど弱くなります。

本当に大切なことなので繰り返しになりますが、歯を失ったことがおありの方はお分かりかもしれませんが、一度のむし歯などの病気でその歯を失ったのでしょうか。
違うと思います。元は白く綺麗な歯の転落のきっかけは小さな虫歯から始まったのではないでしょうか。患者さまからよく伺うその歯の平均的転落ヒストリーを物語調でお話してみましょう。

こんなボロボロの歯ですが、元は白くきれいな歯だったんです。そのそも最初のきっかけは、ちょっと歯磨きをサボってしまってうっかり小さな虫歯を作ってしまったことでした。

銀歯や詰め物でその虫歯の治療を受けてほっと一息ついた何年か後に、また同じ歯に冷たいものがしみてきたり、歯がズキズキと痛むようになって慌てて歯科医院に行きました。

虫歯になってさらに深く歯を削ったり歯の神経まで取らざるを得なくなってしまいましたが、何度かの治療で痛みも収まり、今度は大きな銀歯を被せる羽目になってしまいました。

でも治療後は普通に噛めるし、痛くもないのでこれで普通の生活に戻って安心していました。

そうこうしていると今度は歯のつけねや歯肉が腫れて痛くなったので歯科医院に行くと、重症ですと抜歯を宣告されてしまったのです。エッ!と思わず叫びましたが、今後どうしていいのやらわからずその日はとりあえず痛み止めの薬だけ貰って家でゆっくり考えますと言って帰宅しました。

真面目に歯科医院に治療に通ったのです。白くきれいだったこの歯の転落ヒストリーに一体なんの落ち度があったというのでしょうか?
それは最初に虫歯になって歯を削ったからです。一度でも歯を削ると歯と詰め物の境目(継ぎ目)ができます。先ほども述べましたが、そこが弱いのです。

当たり前の話に聞こえるでしょうが、虫歯になって歯を削る必要のないようにしかりとした歯磨きや、歯科医院を巻き込んででも
予防のために通院すればこの最初の転落のきっかけは防ぐことができました。残念ながら頭ではわかってもこの当たり前が実践できる人が多くないのが現状です。

あなたがこのヒストリーに近いご経験をお持ちでないのなら、それは本当に幸運なことでした。
途中でしっかりとした治療をお受けになられたか、何か別なことに救われた可能性があります。
歯周病で歯を失った方を除けば、かなりの頻度でこの転落ヒストリーに同感が得られることだと思います。多くの患者さまから同じような経験談を伺うからです。
もしあなたがこのヒストリーに共感を感じられたなら、あなたの実体験、これが論より証拠です。

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できるだけ歯の神経を取らない!

もう一つ歯の寿命を左右する大変重要なことがあります。それはできるだけ歯の神経を取らないことです。

歯の神経を取ると歯は確実にもろくなり、歯が割れたりして歯を5~10年も早く失うことが厚生労働省の調査でも明らかになっています。
人生が長くなった現代において、そして老後の最たる楽しみが食べることであることを考えると、この5~10年はすごく大きな意味を持ってきます。ただお若い方にはこの意味が伝わりにくいことが残念です。

もろくなった分を補おうと、昔は金属の芯棒を歯と根っこに差し込んで強度を上げる治療を行っていました。
しかし症例によってはその細く尖った芯棒が氷を割るアイスピックの働きをして歯の根を割ることが時折起こります。

割れた場所と程度によりますが、大部分が歯を抜かざるを得なくなります。お互いに苦労して治療をしたのに、その治療がきっかけになって歯を失ってしまう、皮肉で残酷な結果です。芯棒の細く尖った形だけでなく、同じ厚さななら歯より金属の方が硬いことも影響しています。

現在はテニスラケットやゴルフクラブなどに使われている適度のしなりと柔軟性のあるグラスファイバーを芯棒に用いることでかなりこの危険を回避できるようになりましたが、それでも歯のもろさを完全に回復することはできていません。

神経がある生きた歯は、大地に根を張り暴風にしなりながらも耐える大木のようです。
一方で神経を取った歯は、大地から栄養や水分を補給されることなく乾燥して反りやひび割れが起こってしなりと弾力を失った切り倒した丸太のようです。一見同じように見えても実は別物なのです。

今の科学をもってしても同じにはならない、これができることなら神経を取らないことをお勧めする理由です。




できるだけ歯の神経を取らない3Mix-MP療法

先ほどお話ししたような不都合があることがわかっていながら、どうして神経を取らなければいけないのでしょうか。それは歯の神経と世間一般的に呼ばれている組織は細菌の感染に弱く、一度感染を起こすと薬や治療では元に戻せなくなるからです。

このため感染を起こした神経を取り出し、入り込んだ細菌をやっつけるなどの根っこの治療をして先ほどの芯棒が入ります。それを削って歯型を採って銀歯を歯に被せて治療が終わる流れになります。

でもちょっと待ってください。神経が細菌感染に弱いのはよくわかります。神経が細菌の感染を起こしているのか歯科医は検査で正確に判断できているのでしょうか。

実は現代の医学では神経を取り出して標本を作り顕微鏡で見れば正確に判断できますが、一旦取り出してしまうともう二度と元には戻せません。そのため取り出さないで肉眼やレントゲン写真などの所見と症状で病状を推測して判断しています。しかし症状はあるものの実際には神経にまでまだ一歩感染が及んでいない症例も多数あります。

そのため実際に虫歯を削っていくと歯に穴があいて神経が露出したら神経を取り除き、虫歯を全部削ったが神経の露出がなかったら神経を取らないという、実際の治療を進める上で最終決定をすることが一般的です。

さらに肉眼では細菌が見えないため、歯質を染色したり多少余分に削ることで細菌の染み込んだ部分を確実に除去することが行われています。この治療によって細菌感染を絶つことができます。

しかし世の中概ね白と黒の間にグレーが存在するようにこの判断にもグレーの部分が存在しますし、虫歯を削った結果を待つと神経を助けることができない症例が一定比率でてきます。

でもよく考えてみてください。虫歯と毛嫌いしていますが、元は自分の大切な歯の一部だったのです。それは本来は自分の味方であって、悪いのは細菌です。では細菌だけやっつければ虫歯は全部は削らなくていいのではないか?そう考えて考案された治療法が3Mix-MP法です。

経験的にもうすぐ神経の露出が予想される段階で虫歯を削るのをやめて神経の露出を回避します。そこに抗生物質を少量置いて残った虫歯の細菌を死滅させる治療法です。
長年治療してきた実感としては、かなり成功率が高く本来神経を取らざるを得なかった症例の一部を助けることができたと考えています。

欠点としては、すでに神経に細菌の感染が起こっているかどうかが目で確認することができないために、全ての症例で成功しない点です。一部の治療時にすでに神経に感染が起きてしまっている症例は治療しても手遅れですが、残念ながらこれは結果でしか判断できません。この症例は結果的に後で神経を取る治療が必要になります。

ですが考えようによっては、神経を取らずに済む確率が高いものに賭けてみた結果、悪い方の確率に入って神経がなくなってしまいましたが、最初に神経を取るか、賭けに敗れた時に神経を取るか、タイミングの違いだけと考えられなくもないと思います。先程にお話した歯の神経がなくなった場合のいくつかの問題を考えると、賭けに勝つ率の方が高いのですから、やってみられる価値はあるのではないでしょうか。10年近くの何百本かの神経を取らずに済んだたくさんの歯がそう訴えているように感じます。