第三の歯、インプラント

まだインプラントがあまり知られていなかった時代に、治療の選択肢としてインプラントというものがあることをご来院された患者さまにご説明する目的でインプラント治療の基礎的なお話しと審美的な歯科治療のお話しなどについて院長高岡が書いた小冊子です。

当時より治療技術などは進歩しましたが、基本的なことは今も変わっていません。基礎からインプラントのことをお知りになられたい方にお勧めいたします。

以前は印刷をして来院された患者さまに手渡ししておりましたが、時代に合わせてホームページでお読みいただけるようにしました。簡単に読めるように量も12ページと少なくしましたのでご興味がおありの方はどうぞ。

第三の歯、インプラント

「豊か」とは?

戦後から高度成長期を経て日本人はこれまで経済成長こそが豊かさの原点だと考えてきました。
家電量販店には最新のデジタル家電があふれ、百貨店には世界中からの商品が並んでいます。
経済成長を追い求めてきた日本は今かつてないほどの物質的な豊かさを手にしています。

一方で人々は疲弊し、経済や人生、治安、食にいたるまでさまざまな不安が社会を覆っています。これが国内総生産577兆円、世界第3位の経済大国、日本のもう一つの姿です。
確かに身の回りを見渡してみてもたくさんの品々に囲まれ、私たちは大きな不自由なく暮らしています。それでも私たちには本当に飢えはないのでしょうか?豊かだといえるのでしょうか?

人は物質的なある基本的なモノが満たされていなければ、飢えや凍えのもとではもちろん豊かだとはいえません。しかし、「豊か」とは昔3Cといわれた車、カラーテレビ、クーラーのような「モノ」ではなく、時に「ゆとり」の意味で表現されることがあります。

それは日々時間に追われながらいかに多くの富を持つかという暮らしから、いかに自分らしくゆとりのある充実した人生を生きるのかという価値観への移行なのかもしれません。

生活と人生は非常に個人的なことです。ですから「豊か」も横並びのみんなと同じモノでなく、それは人がどんな生き方を望むかという個人的なことと密接な関係があることです。
あなたと私は同じかもしれないし、違うかもしれないのです。

しかし一方で「豊か」を支えるのはいうまでもなく「健康」であることはご承知のとおりです。
少しでも長く人生を送ることも大切ですが、現在はその質に関心が集まっています。
モノによる豊かさではなく、快適で健やかな人生を送ることが最大の財産だと考える人々が確実に増えてきているようです。

 

 

はじめに

若い時代には省みることもなく、そして自分の後から黙ってついてきた「健康」。
老化は最初に「歯」や「目」から始まり、年齢とともにその存在を意識するようになってきます。
週刊誌やテレビは言うに及ばず、書籍をみても健康コーナーができるほど多くの情報があり、健康への関心の高さを裏付けています。

古今東西を問わず、また自然の摂理とは頭で分かっていてもいざ自分の問題となってくるとがっかりしたり不安になってしまうのも「健康」です。人の身体は非常に複雑で、さらにデリケートです。

最近歯、特に歯の噛み合わせと全身の関係が報道されるようになってご存知の方も多くいらっしゃるでしょうが、ほんのわずかな噛み合わせの不調和でアゴや身体を歪ませ、頭痛、肩や首の凝り、背中や腰の痛みなどを起こすことがあります。
肩こりや頭痛、腰痛などで死ぬことはないとしてもこれが毎日となれば辛いものです。
快適な生活とはいえないでしょう。
しかも歯のかみ合わせはそれだけにとどまりません。
あなたの大切な歯の寿命、そして治療の結果を左右するほどの影響力を持っています。

足の裏に魚の目が一つできても不愉快で歩きにくいものですし、小指の先にちょっとした傷をおっても日常生活に支障が出ることもあります。不愉快な原因はほんの些細なことなのですが、毎日のこととなれば快適な生活とは言えなくなってしまいます。
たった1本の歯の不具合で食べることに支障をきたし、痛みで1日が台無しになり、毎日がちっとも楽しくありません。

歯が不自由なく日常使えることなど普段は考えもしない、勿論感謝もしていないのですがこんな些細なことで不愉快になってしまう。人生とは何と細かい事情の上に成り立っているものなのでしょう。

歯や体の歪みは時間とともに、また年齢を重ねるにしたがって大きく、深くなってきます。
ご本人の知らぬ間に真綿で首を締めるようにじわりじわりと歯に負担をかけ、日々歯の寿命を擦り減らせていることになります。
症状がでてきてあわてて歯科医院に駆け込んでみたものの病状の進行にびっくり仰天し、元通りに回復する方法がなかったり悪ければその歯を失う結果になってはじめて後悔される場合もあるようです。

このように歯の寿命や、よくかめて快適な食生活、ひいては豊かな人生を知らぬ間に放棄していることがあります。歯は単純にかめればいいと言うものではないのです。

ここに大切な歯を亡くしてしまった人がいたとして、今後の選択肢は幾つかあります。
最も悪い選択は抜けたまま何もせずに放っておくことです。
お口の中だけの狭い視点では失った機能を取り戻すだけでなく他の歯に負担をかけて無理をさせないように気配りが必要です。できることなら身体全体の大きな視点では歯→顎→頭→上半身→下半身と歪みが伝播して全身のバランスが歪んでいかないような配慮が必要です。

実際の治療法としては「入れ歯」、「ブリッジ」、「インプラント」、「自家歯牙移植」などの方法がありますが、インプラントもただ植えただけ、ただ噛ませただけでは意味がないのです。先ほどお話しした「歯」、この「インプラント」、そして「入れ歯」全てに共通するものは上下のあごの歯の噛み合わせです。

どうして歯がだめになったのでしょうか?どうしてブリッジや入れ歯が短命に終わったのでしょうか?
多くの方々がむし歯や歯周病だとおっしゃいますが、その病気に歯のかみ合わせが大きく関わっていることにご存じない方が多いのです。
「入れ歯」、「ブリッジ」、「インプラント」どの治療も、そしてそれらよりもっと大切な今あるご自分の歯の寿命に関わる歯のかみ合わせに関心を持って頂ければと思います。

 

 

インプラントをする前に / 第三の歯、インプラント 1/10P

詳しくは別に述べますが、歯がなくなった時にはブリッジや入れ歯、そしてインプラントなどの治療選択肢があります。しかし最も悪い選択肢は「歯が抜けたままに放置しておくこと」です。
まだ噛めるからとそのまま放置しておくと、残った他は伸び出し、傾いてかみ合わせが悪くなり、歯の寿命を短くしてしまいます。詳しくは「歯の病気のお話し」の「抜きっぱなしは大怪我の元」をご覧ください。

歯がなくなったらブリッジや入れ歯、そしてインプラントを入れればよいと単純に考える風潮に私は反対です。物事には必然性があり、それが起こった背景があるからです。
すなわち、歯を失ったにはそれ相応の原因があり、その原因を追求・解消しない限り第二第三の問題が出るからです。そして段々また歯を失い、後で追加したインプラントも長持ちしない、そんな負の連鎖が起こることを避けたいのです。

どうしてその歯がなくなったのか?それは今回の本題ではありませんし、症例によってその原因は様々ですのでここでは触れませんが、目先のことだけでなくその背景がこれから人生に非常に大切だということを最初に申し上げておきたいと思います。
この大事なお話しとその解消方法は、実際の治療の際に個別にお話しして参りたいと思います。

 

歯を失った時の治療法のいろいろ / 第三の歯、インプラント 2/10P

歯を失った時の治療の選択肢として代表的なものは、入れ歯、ブリッジ、インプラントなどです。
「どの選択肢がいいですか?」とよく質問を受けますが、それぞれに利点と欠点があって「どれがいい」のではなく、症例によってどれが適している、ないしはデメリットとメリットを勘案してこの症例にはどれが最も有利か、または今のお困りを解消するにはこの方法が最もご希望に添える方法ですとお答えしています。その方のご希望内容や症例によって異なるとお考えください。

インプラントと他の選択肢とその特徴を比較してみましょう。
ブリッジの不利な点は、第一はなくした歯の両隣の歯を削らなければならないことです。歯は削ると弱くなりむし歯になりやすくなります。
また第二はかむ力を失った歯の分まで両隣の歯が負担しなければなりません。ましてやその歯の神経が既にない場合は強度が弱くもろくなっていますので時として歯の根が割れるリスクをはらんでいます。このようにブリッジというものはその構造上、なくなった歯にはよくても残った歯には迷惑なことなのです。

今度は入れ歯の不利な点です。
入れ歯を安定させるための針金が見立つ場合があります。
また入れ歯でものをかむ度にその針金で歯を揺することになったり、歯の周囲が不潔になり歯の健康を害する場合があります。
入れ歯は比較的大きな異物として感じる方が多く、入れ歯の下に食べかすが入り込んで痛みや不快に感じたり、入れ歯は骨の中に植わってびくともしない歯と違ってかむ能力がどうしても落ちることが不満になるケースもあります。
ただし全てのケースがこのような事になるのではなく、こうした場合があるとご理解ください。

一方他の選択肢の有利な点はインプラントの外科手術が不要であることと、治療が比較的簡単なこと、治療費が比較的少なくなるケースが多いことです。
ただし保険外のブリッジの場合は費用的なメリットはそう大きくありません。
他の選択肢の詳しい特徴や注意点などは他の小冊子をお読みいただくとご理解いただけるのではないかと思います。

 

インプラントで手に入るもの / 第三の歯、インプラント 3/12P

むし歯や歯周病で歯をなくされた方から、「ああ、歯をなくすと不便だ!」、「みっともない!」、「かみにくい!」というお話しをよく伺います。ただこうした不満は実は表面的なことで、気持ちの底には歯が揃っていたころに当たり前のようにできていたことができなくなったことへの不満と、「自分に自信が持てなくなった」という自信の喪失がある場合があります。
歳だからとあきらめる気持ちと歳に寄り切られたくない想いが交差し、「この先どうなっていくのだろう?」をいう不安を抱えておられることが多いのです。
歯が揃っていた頃には考えもしていなかった不安だと思います。

そんなあなたにインプラントはいろんなことを運んで来てくれます。

第一は、『残った歯が長持ちする』ことです。
他の小冊子で歯を削ったり神経を取ると歯が弱くなり、歯の治療が次から次へと必要になって、挙句の果てには歯を失うことすらあることをお話ししました。
ブリッジのように歯を削らなくて済むメリットは歯の寿命を考えると大変大きいと思います。
また前のページに他の選択肢の不利な点で述べたように他の歯に負担をかけ、その寿命を短くすることを避けることができます。

第二は、『なんでもかむことができる』ことです。
入れ歯と違ってインプラントは歯と同じように骨の中に植わってびくともしませんから、かむものを選ばず、なんでもおいしくかむことができます。肉などの食べ物をしっかりかみつぶすことができますから、うまみ成分がしっかり食べ物からにじみ出て、食材そのものの味をじっくり味わうことができます。
「あれが食べられない、これは固くてだめ」「昔は好きだったけど、今はね~」と選んで食べる必要もありません。
人と外食に出かけても、何も気にすることなくなんでも食べたいものが食べられます。
ですからどこにでも、なんの気兼ねもなく、出かけることができます。
そしてなんといっても、「おいしい」が蘇ります。
食べることは生きることですが、快楽でもあります。これを手に入れることができるのです。

第三は、『快適である』ことです。
入れ歯のように口の中に異物感がなく、その大きさも、そして見た目も天然の歯とあまり変わりません。もちろん入れ歯ではありませんから、歯に引っかける針金のようなものもないので、見た目にもよく、人に歯がないことを気付かれることはないでしょう。
また下の前歯の裏側にある入れ歯の邪魔な部品もありませんから、舌触りは歯があったときとまったく同じです。そのためかつ舌もよく、喋りにくさも全くありません。
入れ歯の周りや中に食べかすが入って気持ち悪いようなことも起こりません。
ですから、外で食べた後に人目を気にして洗面所で入れ歯を洗う必要もないのです。
そしてインプラントは口の中に固定しているために、取り外しをすることはありません。
食べる度、食後に入れ歯のように外したり、また入れたりする必要がないのです。
このように見栄えもよく、口の中がすっきりとして快適なことが大きな特徴です。

第四は、『心の負担を軽くする』ことです。
先ほどお話ししたようにインプラントは異物感がなく、かむことや喋ることなどの機能面、そして使用感が天然の歯とほとんど変わりません。術後のアンケートでも「歯がよみがえった」「歯がなくなったことを忘れる」というお声があるように、毎日が快適です。
この『忘れる』が非常に大切で、歯を失ったことによるマイナスの心をプラスに変えてくれます。
歯を失った時に味わった一種の劣等感のような感情や、今のあなたの、そしてこれからのあなたの自信の喪失や、不安を吹き飛ばしてくれるのです。
何といっても「かめない」、「おいしくない」は楽しみのない毎日です。
その憂鬱で元気もでない毎日からインプラントが解放してくれるのです。

 

インプラントは第三の歯? / 第三の歯、インプラント 4/12P

歯がなくなった場合の機能の回復には幾つかの方法があることは前のページでお話ししましたが、その中で最近非常に注目されているのがインプラント(人工歯根)による方法です。

インプラントは、まずチタンの人工歯根をアゴの骨に植え込んで土台にします。ビルに例えると1階部分にあたります。
次にこの人工歯根のうえに、金属製の柱をネジで取り付けて2階を造ります。
さらにその上に人工の歯をかぶせて3階建てのビルを完成し、失った歯の代用をさせる治療です。

チタンは安定した金属で腐食せず、骨との親和性が高く、拒絶反応も起きません。インプラントは骨のなかにしっかり植わっていますので、びくともしません。
ですから硬い物でも、天然歯と同じようにかみ砕くことができるのです。

入れ歯のような異物感や発音の障害がありません。ブリッジのように他の歯を削ったり負担を他の歯にかけたりすることがなく、他の歯の寿命を短くすることもありません。
入れ歯しか選択肢が無かった時代に比べ格段の進歩で、快適な食生活を可能にしました。
「第三の歯」、「第二の永久歯」と言われるわけがここにあります。

今、最も進んだ歯科治療法インプラント。最新の治療法と聞くと不安に感じる方もいらっしゃいますが、すでに20年以上の実績を持つ治療法で、多くの方々がその素晴らしさを体感されています。
私の歯科医院でも「失った歯がよみがえった!」という喜びの声をたくさんいただいています。

 

インプラントの弱点 / 第三の歯、インプラント 5/12P

前のページでお話ししたようにいいことがたくさんあるインプラントですが、及ばない所もない訳ではありません。インプラントは身体から生えてきたものではなく、人間が人工的に作った金属でできた大きなトゲです。神様やご両親からもらった、そして最も自分の体に合った、天然の歯ですら歯槽膿漏でダメになることがあるのです。
そんな状況で口の中に大きなトゲがささっているのですから、不潔にするとバイ菌が入り膿みますよね。それでも放っておくと骨が溶けてなくなってしまうこともあります。

また天然の歯には存在する歯根膜という、感覚を感じたり、歯の恒常性を維持し、かむ力を和らげるクッションの役割をする組織がインプラントにはありません。

そして適応症もある程度限定され、感染への配慮、十分な手入れが欠かせません。
はっきりした耐用年数はありませんが10~15年間と 考えて、それ以上持てば儲けものとお考えいただければいいと思います。

こんなことから天然の歯と同じまでとはいかないのです。
感染もせず長持ちさせるにはそれなりの努力が必要になります。
私見ですが、代わりの歯としては非常に有用である半面、「第三の歯」「第二の永久歯」と呼ぶには多少及ばないところもあると思っています。

しかしこんなマイナス面に対し多くのプラス面が存在することから、多くの方がインプラントを実際にお使いになっておられます。
ある研究報告によるとその9割の方々が満足を感じていらっしゃいます。また同じくインプラント経験者へのアンケートで「今のインプラントがだめになった時に再度インプラントをやりたいですか?」の問いに約9割の方々が肯定的なお答えであったことから、第一選択ではありませんが入れ歯と並ぶ大きな選択肢の一つとして私は考えています。

おいしく食事ができ、精神的に豊かで人生が楽しくなった方が大勢いらっしゃるのも事実です。
このようにインプラントは長短併せ持つものですが、快適で質の高い生活を支える大変有効な治療法の選択肢の一つであることは間違いありません。「快適」で「よくかめる」がトレードマークです。

 

インプラント治療はどうするの? / 第三の歯、インプラント 6/12P

Step1 : 診断と治療計画
レントゲンやお口の模型などの検査を経て十分な診断後、インプラント治療の計画を立てます。

Step2 : 治療のご相談
現状のお口の中のご説明やインプラント以外の選択肢を含めたいろいろな選択肢の特徴のご説明など多くの観点からのアドバイスを含めたご相談の機会を持ちます。
この後患者さまのご希望や医療サイドからの意見を踏まえて最終的な計画をご相談しながら決めていきます。

Step3 : インプラント手術
麻酔をつかって無痛状態になった時点で顎の骨をドリルで穴を掘り、その穴の中にチタン製の小さなネジのような形をしたインプラントを埋め込みます。
手術時間は症例によって違いますが平均的に1~2時間くらいです。術中は無論無痛です。
針をツボに打っておくと術後もほとんどの症例で無痛に近く、治療のイメージが大げさに映りますが思うより大変楽な治療です。おかげで患者さまから好評をいただいており、他の場所の2回目のインプラント手術が中止になったことは今までにありません。

Step4 : インプラントと骨がくっつくのを待つ期間
インプラント手術直後はちょうど挿し木をしたばかりの状態です。根っこがはって挿し木がしっかりするまでしばらく様子をみるのと同じく、インプラントと骨がくっつくまで約6~24週間はそ~としておきます。
この期間は症例によって違ってきます。
安定期が過ぎれば仮の歯や仮の入れ歯を入れて日常に支障が出ないようにしておきます。

Step5 : 正式の人工の歯の装着
歯型をとって正式な人工の歯をインプラントにセメントやネジをつかってくっつけます。
これで歯を失った場所で堅いものでも何でも噛めるようになります。
ここでお作りする人工の歯には色々な材質のものがありますので術前の治療の相談の時にご相談して決めます。最近の傾向としては金属がお口の中で見えるのを嫌って、自然観のある強化プラスチックやセラミックをつかった人工の歯が好まれています。

 

インプラントQ&A / 第三の歯、インプラント 7/12P

■インプラント治療って痛いの?

「新聞や雑誌で知ってインプラントに興味はあるんです。だけど骨にドリルで穴を開けてインプラントを植えるのが怖いのよね。」「痛そうだし、後で腫れたり大変なんでしょう?」
インプラントで必ずと言っても良いくらいよく耳にするご質問です。
快適で良いことは分かってはいても、術中と術後の「痛み」のご心配があることでしょう。
でもご安心ください。大丈夫です。
別冊「歯の病気」の統合医学でもお話した東洋医学を取り入れた補助療法を行えば、術中はもちろん、術後も大変楽です。翌日の消毒時に皆さんケロリとされています。
患者さまのご感想にもあるようにまさに「考えるより生むがやすし」です。
他によく耳にするご質問をあげてみますので参考にされてください。

: インプラント治療に年齢制限がありますか?
: 16歳以上で身体の条件が満たされている限りどなたでもお受けになれます。
一般的には年齢の上限はありません。

: インプラントは誰でも受けられますか?
: 治療制限のある病気など身体の条件を満たしていらっしゃり、あごの骨の量が十分あればどなたでもお受けになれます。
あごの骨の量は歯をどこまで悪くしてなくしたか?歯槽膿漏をどこまでひどくしたか?その方の元々の量などで決まります。
しかし今は技術が進んで骨を増やす治療もできるようになりました。
インプラントをご希望になられた時点で検査をし、今後をご相談させていただきます。

: インプラントはどの位もちますか?
: 治療の成功率は80~90%、感染さえ起こさなければ10~15年が一つの耐用年数と考えていますが、管理が悪くて短い方や20年以上維持されている方まで幅広くいらっしゃるのが現状で、術後の管理がこれらを決めてしまいます。
残った歯と同じように毎日しっかりと手入れをし、必ず定期健診とメインテナンスをお受けください。

私ども大人の歯を永久歯と呼びますが、永久ではありませんね。おかしな名前です。代生歯と呼んだ方が適当だと思います。入れ歯もインプラントも人工代生歯です。
症例によっては入れ歯で十分なこともありますし、入れ歯に不自由されていない方は入れ歯の方が良い場合もあります。時間をかけてお作りした入れ歯はそれなりのものがあるのです。

現在インプラントは健康保険の対象とはならず全額のご負担となっております。治療に対するご不安や少なからぬご負担に加え、インプラントの寿命や成功しない可能性があったりすると、入れ歯にされるか御迷いになられるかもしれません。インプラントはたしかに入れ歯より優れた所をたくさん持っていますが、決してインプラントにこだわらず冷静な目で選択して頂きたいと思います。

 

インプラントに種類はあるの? / 第三の歯、インプラント 8/12P

最新の治療と言われているインプラント。以外に思われるかもしれませんが、骨の中に埋め込むインプラントは20数年の歴史があります。その間色々な試行錯誤を経て現在のインプラントに進化してきました。
現在では販売を中止したもの、改良により形をかえたもの、治療経過からあまり用いられなくなったものなど、言い換えればインプラントも進化しつつ淘汰されてきました。現在でも毎年のように新しいインプラントが開発、製品化されています。

インプラントに携わって歴史の長いメーカーから新規参入メーカーまで何十社、世界中ではひょっとしたら何百社かもしれませんが沢山のメーカーがあります。一つのメーカーでも色々なタイプのインプラントを製造しており、合計すると何千・何万と選択肢があるわけです。
基礎的な研究を繰り返し、臨床的なデータを公表しているメーカー、そうでないメーカー。世界中で臨床に用いられ治療後の結果の追跡がしっかりされているもの、そうでないもの。骨とくっつく時間の速いものや手術が2度必要ないものなどそれぞれに特徴があります。
インプラントといっても色々なインプラントがあるのです。

広範囲の情報の中から一つのインプラントを選ばなければなりません。まるでこの数え切れない情報社会の中からインターネットで必要な情報を選択していくようなものでしょう。

また先進的なことは裏返して実績に裏付けられた信頼がないことを意味します。旧態然として変化のないものは進歩していないことでもあります。

今だインプラントは天然の歯を越えていませんし、将来にわたっても超えられることはないでしょう。
しかし近づくことができると考えられていますし、現に以前より近づきつつあります。

現在のインプラントは完成しつくされたものでないにしても、メーカーとして絶え間ざる前進をしていく意欲がなくてはなりません。実績があることは多くの批判や評価を受けられることでもあります。
そしてその情報をオープンにしていることや、それに耐えられるものでなくてはとてもお口にお入れすることができません。

このようにインプラントと一言で言ってもいろいろなインプラントがあるのです。
人のお口の中は様々ですから、あなたにとってどのインプラントが適切なのか、どんな特徴があるのかなど主治医とよくご相談されるとよいでしょう。

 

インプラントを長持ちさせるには? / 第三の歯、インプラント 9/12P

インプラントは植えさえすればよい。後は歯医者がやってくれると思ってはいませんか?
この考え方には歯を物として考え、部品を取り替えるようにインプラントを入れる、そんな風に受け取れます。はたして歯は部品なのでしょうか?インプラントは歯と瓜二つなのでしょうか?

歯の大切さやありがたさ、そしてその価値は前にお話ししました。
またインプラントの実力もかなりとは言っても天然の歯にはかなわないこともお話しました。
噛み合わせの項でお話ししたように、ご自分の身体と最も馴染みのあった天然の歯ですらなくなったのに、同じ状態で何も変えないでそこにインプラントだけ入れても結果は良くありません。歯がなくなった事実から学ぶ必要があります。

歯がなくなる理由は色々ありますが、最も多いのが歯周病(歯槽膿漏)です。
その歯周病を起こす理由が細菌感染と噛み合わせであることを考えると、一定の条件を満たしたインプラント治療を行う必要があります。
その条件とはどんなことなのでしょうか?それは、

①   一部の歯やインプラントに噛み合わせの力が強くかからないように、全体の歯やインプラントでまんべんなく力を負担すること。

②   さらに顎の動きや身体と調和した噛み合わせにすること。

③   食いしばりや歯軋りなど歯やインプラントにとって負担になる力を回避すること。

④   残った歯の徹底的な歯周病治療と、毎日のていねいな歯磨きの実行。

⑤   インプラント治療後のていねいな清掃でインプラントが細菌感染することを避けること。

⑥   定期的な検診を受けて時折チェックをすること。

などです。要約すると、インプラントを長持ちさせるには、お口全体や身体を考慮した噛み合わせをつくること。細菌感染を回避することです。この目的で当院では「健康倶楽部」と呼ぶお口の中の掃除のプロが定期的にクリーニングと管理を行うクラブがあります。是非ご加入されて、快適で楽しい食生活を維持してください。

入れ歯ではなく、せっかくインプラントを植えて快適なお口にしたのですから、長持ちさせて楽しい人生を送りたいものですね。インプラントを植えて20年以上も快適な人生を送っておられる方もおられます。快適で豊かな人生を目指して一緒にがんばりましょう!

 

インプラントと人工の歯 / 第三の歯、インプラント 10/12P

インプラントの上にかぶせる人工の歯には色々な種類があります。
歯の代用として歯に求められる機能を最大限に回復させ、金属アレルギーに配慮した貴金属で作った人工歯。自然な歯に近いセラミック(陶器)の歯などがあります。

ある程度の美しさと柔らかさがあることから、奥歯には歯と似た色をした白い強化プラスチックやセラミックを使うことがあります。それぞれに特徴があり人工の歯に何を求めるかで選択が変わってきます。

また症例によっては、歯科医の立場からどうしてもお奨めしたい人工の歯がある場合もあります。
他の歯の状態から最適な人工歯が決まることもあります。木を見て森を見ずにならないように、お口全体として考えていきたいものです。ご自分に最適な治療をよく相談されてお決めになられると良いでしょう。

これらの人工の歯はすべてオーダーメイドです。あなたの噛み合わせや口元の表情にまで配慮をしながら、一つ一つ丁寧に手作りしていきます。
一旦お口に入れば、食事をしたり日常生活の中で存在を忘れるくらい自然でいたいものです。
人前で堂々とお口を開けて笑いたものです。自分の好物だったが食べるのをあきらめていたもの、また他の人がおいしそうに食べているのと同じもの、何でも食べられることでしょう。

これだけ時間と手間をかけて治療した歯ですから大切にされ、楽しい生活をお送りいただきたいと思います。

 

インプラント治療症例 / 第三の歯、インプラント 11/12P

以前に向かって左下の奥歯2本の歯を失い(青い矢印)、部分入れ歯を入れておられた患者さまです。今回、向かって右下の奥歯がダメになって来られました。
その右下の奥歯はブリッジになっていて、1本歯がない場所の前後の歯2本で3本分をつないで支えていました。このまま無理をして使うとダメな歯だけ でなく、手前の大切な歯まで巻き添えになってしまいます。

被害を最小限で食い止めるためにもブリッジを外さなければなりません。 そうすると右も左も歯がなくなってかめませんし、下の入れ歯が苦痛で何とかならないかとおっしゃいました。
そこで思い切ってインプラントを左下に2本、右下に1本植える方針を立てました。

治療後の写真です。インプラントを3本植え(白い矢印)ました。
その後人工の歯を金属からセラミックに作り代えたため綺麗ですね。苦痛だった部分入れ歯からも開放され、お口の中から入れ歯がなくなりました。

「入れ歯を入れないですんで口の中が快適です。長くかかったけど何でもおいしくかめてやっぱりインプラントにしてよかった!自分の歯より噛める感じですよ。」と喜んでいただきました。
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インプラント治療のご感想 / 第三の歯、インプラント 12/12P

● インプラント治療を受ける前は正直言って顎の骨にドリルで穴をあけることを想像するだけで怖かった。しかし長年我慢しながら使ってはきたものの下顎の入れ歯が痛いわけでも噛めないわけでもないのだが、どうも馴染めなかった。
舌の先にいつも異物があるし、味も変わってしまうのが嫌だった。
そこで思い切ってインプラントにしてみたのだが痛くもないしはれもなく、次の日は困るだろうと思っていたがなんともない。
何でも噛めるし、むしろ自分の歯より噛める感じで、口の中の邪魔なものがなくなり食事もおいしい。
こんなことならもっと早くインプラントにしたほうが良かった。  (60歳代 男性)

● 骨に穴を開けるという事に怖さを感じていました。
前後の歯も悪いので、その前後に負担をかける入れ歯及びブリッジは選択したくなくてインプラントにしました。
治療前に感じていた怖さ等ほとんどなく案ずるより産むが安しでしょうか。 (50歳代 女性)

● インプラント治療前は治療法を聞いた時は怖かった。
自分の歯を持ちたいと思いインプラントにしたが、思ったほど治療は怖くなかった。
インプラントにして自分の歯を持っているみたいでよかった。
インプラントにして悪かったことは特にないが、手入れを怠れないと思った。 (40歳代 男性)

● 骨に穴をあけるのが怖かったが、ブリッジにしていたため前後の歯に負担がかかり寿命が短くなると思いインプラントにしました。
骨に穴をあける時、時間がかかると思ったが痛みもなく短時間で終わった。
自分の歯のような気がしています。 (50歳代 女性)

この他にもたくさんのご感想をいただいております。 << 詳しくはこちらへ >>
医院に匿名でファイルしてありますのでご希望の方はお読みください。

ご感想にあるように意外と思っておられるより楽な手術で、歯を抜いた時とさほど変わらないのが実情です。硬い物でも何でもかめる、入れ歯とは違う快適さをご期待ください。

おわりに

人生は長い道程です。そしてその道中には、陽光に満ちる日もあれば、風雪に心身のシンまで凍てつく日もあります。
長い道程は老化と消耗を意味し、愛情と補給を怠れば道半ばで倒れることになってしまいます。しかしご自分の人生やお身体に疑問や興味を持つ人は、愛情と補給を考える人です。
この本を手に取られたあなたは、きっとそういう方なのでしょう。

ご存知の通り60年の人生で再び生まれた干支に還ることから還暦と申しますが、昭和20年代まで人生は50年でした。当時は還暦を迎えられること自体大変幸福なことだったのです。
還暦を人生の区切りとして、また赤ん坊として生まれ変わってそれ以降の第二の人生を歩むという考え方があります。以降の人生は正しく生きて来た人へのご褒美なのだそうです。
この分別も経験もある赤ん坊、ご褒美の第二の人生を我慢や忍耐でなく楽しく謳歌したいものです。

ここまで人生を歩んでこられたこと、そのこと自体が誇らしいことです。
自分の一生は何の、誰のための人生だったのでしょうか。
何をもって幸せとするか、それは人によって様々かも知れませんが、言うまでもなくそれらすべての基本は「健康」です。

入れ歯がガタガタして食べるものを選ばざるを得なかったり、喋るのにも一苦労。
口元も貧相になってしまい、身体のあちらこちらに症状がでてつらい人生を余儀なくされている。
こんな方々が大勢いらっしゃいます。
人生いつも下がってくるのを気にしなくてはいけない靴下より、履いていることを忘れるくらい自然で自分の思い通りに動ける靴下のほうが快適です。

丈夫な歯がたくさんあった時代には想像すらできなかった、「お新香をコリコリ食べてみたい」「大好きなお煎餅をバリバリ食べてみたい」「人と同じものを食べてみたい」こんな簡単な要望すら満たせない人生が豊かだとは思えないのです。

しかしテレビからは入れ歯の安定剤や肩こりに効く薬のコマーシャルが毎日流れてきます。
商品を必要な人が存在し、商品が売れるから企業は何千万円もだしてコマーシャルを流すのですから、大変たくさんの人が困っておられるのでしょう。
ガタガタの入れ歯を我慢しながら入れ歯とはこんなものとあきらめてしまわれたのでしょうか。
歯一本くらいどうにかなっても他にまだあるし、これでも十分かめて食事も取れるから取り急ぎ手当てもすることはなかろう。そう考えていらっしゃるのでしょうか。
それとも、この入れ歯でも食べる物を選べば、何とか食べられないわけでもない。
だましだまし使えば何とかなるとお考えなのでしょうか。

そうした方々がいらっしゃる一方で、快適な入れ歯と楽しい人生を取り戻した方々もいらっしゃいます。
この両者の違いは時間や経済的な問題よりも、本当に大切なものは何か、今まで何を大切にしてきたのか、これからの人生をどう歩むのか、そんな問いと答えなのだと思います。

長い人生には幾つもの転換点や転機があります。
これが転機とは思わず選択してきたこともあることと思います。
「健康」についても同じです。
入れ歯や歯に関するトラブルは過去にあなたが選択してきた、またそう選択させた「考え方」の結果なのです。何を基準に選択してきたのでしょうか。その基準は正しかったのでしょうか。
今が幸せであればその選択は正しかったことになります。

人生は長いようで短く、短いようで長いものでもありますが、どうやら人生は歳と共に加速度がつくようです。人は往々にして、いつでもできる事は成し得ず、今しかできない事を成します。
身体も人生も限りあるものですから、行動を始める時期で結果は大きく違ってくるものです。
今ある現状は過去の人生の集大成です。過去の結果が現在なら、現在の結果が未来なのです。
今の選択や行動が今後の人生を決めてしまうかもしれません。
たった一度きりの人生、今までがんばってきたのですから今を快適に豊かに送りたいものです。
どなたにも豊かな人生を送る権利もチャンスもあります。そんなに難しいことではありません。
人生を我慢したり、あきらめたりせず、ちょっと勇気を出して一歩踏み出せばいいのです。

たかが「歯」、たかが「入れ歯」、たかが「インプラント!」とお思いになられるかも知れませんが、そのために「心と人生の豊かさ」を捨ててしまうのはあまりにももったいないと思います。
「歯」のかみ合わせが、まさかそんなことに関係しているのか!
入れ歯もインプラントも捨てたものではないな。
本書をお読みになってそう思っていただければ幸せです。
何十年もあなたを支えてきてくれた身体に「ありがとう。そしてこれからもよろしくね」と声をかけてあげて欲しいと思います。
この本をお読みになり一つでも思い当たることがあれば今すぐ行動していただきたいと思います。
長い道程も最初の一歩から始まるように、幸せな人生への一歩を踏み出され、豊かな人生に向かってご一緒に第一歩を踏み出そうではありませんか。

高岡歯科医院院長 高岡周一