糖尿病と歯周病

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歯周病と糖尿病は関係しているのか?

調査によると人が老化を意識するのは歯と眼の変化が最多のようです。その老化に影響を与えるのは遺伝より環境の影響が大きく、特に年齢が進むにつれてこの傾向が強くなってきます。老化の象徴に歯の喪失がありますが、歯を喪失する成人の5人中4人の原因が歯周病です。その歯周病と密接に関わっているのが糖尿病です。

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従来は医科と歯科に分かれた別の病気だと考えられていた歯周病と糖尿病が相互に関連があることが、近年の研究により分かってきました。現在は糖尿病治療のために歯周病治療が必要で、歯周病治療のために糖尿病治療が必要な時代に入っています。
歯周病によりインスリンの効きが悪くなり血糖値が上昇し、糖尿病を悪化させます。逆に歯周病を治療すると炎症所見の改善と共に血糖が改善します。代表的糖尿病検査のHbA1cは歯周病治療で減少し、糖尿病治療薬一剤とほぼ同じ効果があります。

また歯周病検査結果とウエスト腹囲、空腹時血糖、高血圧既往歴、降圧剤の使用、糖尿病、善玉HDLコレステロールの減少が関連するという研究結果も出ています。
このように糖尿病は歯周病のリスクとなり歯周病は糖尿病のリスクとなるのです。

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歯周病になると糖尿病になりやすい?

重度の歯周病があると2型糖尿病を発症しやすく、また逆に歯周病治療が全身性の炎症レベルやインスリン抵抗性、血糖コントロールを改善して2型糖尿病の予防につながるといわれています。
歯周病と2型糖尿病の関連については、2008年の米国健康栄養実態調査(NHANES)や日本人の男女約5,800人を対象に行われた7年間の観察研究でも明らかになっています。
歯周病と糖尿病の相互関係が近年いわれていますが、どちらも生活習慣病です。生活のあり方により発症や発症後の経過が変わってきます。
またどちらも一度発症してしまうと治療も簡単ではありません。発症させない日頃の注意と初期の内に治療をお受けになられることをお勧めします。

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糖尿病になると歯が抜けやすくなる?

成人の歯をなくす原因の80%が歯周病であり、歯周病は糖尿病のリスクでありかつ糖尿病が歯周病のリスクであるため、糖尿病になると歯を失うリスクが高いと考えられていました。 それを裏付けるアメリカの論文が発表されました。糖尿病患者が歯を喪失するリスクは糖尿病既往のない人に比べて2倍に上る結果でした。
こうしたことが背景になり、最近は歯周病と糖尿病の関連が医科の先生方にも浸透してきています。医科と歯科双方が協力し合ってお互いの治療結果の相乗効果を得る目的で地域医療連携が始まってきています。
糖尿病治療のために内科の先生からの歯周病治療依頼や、歯周病治療のために当院から糖尿病専門医へのご紹介が増えてきています。

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糖尿病と歯周病から歯を守るためには

内臓脂肪はインスリンという血糖値を下げる働きのあるホルモンの効きを悪くし、糖尿病だけでなく血栓症や高血圧、高脂血症などに悪影響を及ぼします。こうした病気と因果関係のある歯周病にも問題です。
女性の閉経後に減少することで有名なエストロゲンといいう女性ホルモンは減少すると食欲が増えるため、中年以降食欲が増えて食べ過ぎてしまうことがあります。さらに中年以降は運動などの活動量が減って消費するカロリーが少なくなるので問題が倍増してしまいます。
糖尿病と歯周病から歯を守るために大切なポイントをお話しさせていただきます。

口の中のケアで歯を守る

糖尿病と歯周病が関連しているため、歯周病対策に有効なものは糖尿病対策にもなります。歯周病は細菌感染症であるため、細菌に餌を与えて活発に活動させないことが大切です。
歯周病菌の主な餌は口の中の食べかすであるため、食べたら丁寧に磨く習慣が最も有効になります。

運動で歯を守る

有酸素運動で0.73%、1週間の運動量が150分以上で0.89%、運動と食事のアドバイスを受けた場合で0.58%、血糖コントロール評価で使われるHbA1c(正常値4~6%)が低下しています。
都市部に住む私たちは意外と手軽に取り組むことができるものがあります。それは階段と歩くことです。ダイエット、エクサイズ、ウォーキングなどと肩ひじ張らず、移動する時にちょっと歩いてみる、エスカレーターやエレベーターでなくちょっとだけ階段を使ってみる、そうした日頃のちょっとした行為の積み重ねが意味を持ってきます。

食で歯を守る

現代人の食の特徴は、高脂肪・酸化脂質の多さ(特に動物性脂肪の過多)、繊維質の不足、白米などの精製された穀類、高度に加工された食品、噛む力を必要としない軟食化した食品、食品添加物、単糖類摂取の増加などです。
こうした食に普段から気を付けることで糖尿病と歯周病に強い体を作ることができます。

食行動で歯を守る

  • 腹八分目を目標に、早食い・まとめ食いをしない
  • 時間をかけてよく噛んで食べる
  • 寝る前の2時間は食べない
  • 規則的な食生活
  • 和食がお勧め
  • 野菜をしっかり食べる
  • 食べる順番を考える(野菜・タンパク質・炭水化物・デザートの順番で食べる)

などが食行動の注意点です。

噛むという誰にでもできる簡単な方法で血糖値の上昇を抑えホルモンの変化が起きて食欲が低下することがわかっていますから、時間をかけてしっかり噛んで食事を楽しんでください。
さらによく噛むことが脳へのいい刺激になって脳の活性化を起こし認知症予防に、唾液分泌が増え免疫力アップや歯と粘膜の健康維持と修復などたくさんの恩恵があります。
こうした効果を得るためにも、そして噛むためにも歯周病から歯を守っていきましょう。

睡眠で歯を守る

睡眠が糖尿病に関わっている可能性が指摘されています。最近の論文の要約をご紹介させていただきます。

  • 睡眠時間が長すぎる場合、糖尿病リスクを上昇させる要因となる可能性がある。
  • 睡眠が1晩あたり平均より2時間以上増えている女性では2型糖尿病の発症リスクが15%上昇する。
  • 1晩あたりの睡眠時間が6時間以下と短い女性でも、2型糖尿病のリスクが高まる可能性がある。
  • 平日と休日で睡眠時間の差が大きい人では、コレステロール値や空腹時のインスリン値が悪く、インスリン抵抗性が高く、ウエスト周囲長が大きく、BMIが高い傾向がみられ、日常的な睡眠習慣が乱れ、体内時計にずれが生じると糖尿病や心疾患リスクが高まる可能性がある。

これらをまとめると、たまの休日ぐらい朝寝坊したいのが人情ですが、適度な睡眠時間を休日も含めて維持することが健康と糖尿病予防には大切なようです。

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糖尿病以外の病気にも歯周病は関係しているのか?

現在歯周病は成人の歯をなくす80%の原因となっています。5人に4人が歯周病で歯をなくしている計算になります。最近の研究から歯周病は口の中の問題だけに留まらないことが色々わかってきました。
歯周病原因菌が心臓の弁膜から検出されて話題になりましたが、歯周病は糖尿病や心臓・血管系疾患、呼吸器系疾患、消化器系疾患、骨粗しょう症や低体重児出産や早産とも関連があるともいわれています。

最近発表になった論文の要約をご紹介いたします。

  • 歯周病重症度と認知症重症度が比例する。歯周病はアルツハイマー型認知症の増悪因子。
  • 歯周病患者の心臓・脳血管疾患リスクが1.19倍(65歳以下では1.44倍)
  • 脳梗塞罹患者の歯周病原因菌の量は普通の人の1.2倍
  • 歯周病による歯牙喪失患者は慢性腎疾患発症リスクが2倍
  • 歯周病による顎の骨の減少が1mm増すごとに口腔癌の発症リスクが4.36倍
  • 歯周病との最も関係が強い癌は口腔癌で、次いで咽頭癌、喉頭癌の順
  • 歯周病の人はそうでない人に比べて低分化癌が多く、癌の悪性度が高くなる

歯周病は歯を早くなくして食生活に影を落とすだけでなく、このように知らぬ間に寿命を縮め、生活の質を落とす可能性があります。歯周病は単なる口の中だけの問題でなく全身の問題だということをご理解いただきたいと思います。