意外と知られていない歯の働きとかむこと

歯の働きは?と聞かれると最初に思い浮かぶのが「噛むこと」だと思います。 進化の過程で哺乳類出現以前の動物は食いちぎりそのまま呑み込む食べ方をしており、咀嚼する(噛む)という行為は哺乳類の出現において初めて行われるようになりました。

食べることが優先されているワニのような進化していない動物は、口が顔から前方にそり出し脳のかなり前にあります。
一方で人類は口が闘争の武器や獲物の捕獲、食物の入り口だけだった時代から、口を発声というコミュニケーションの道具としても用いるようになり、これがさらに進化のスピードを上げてきました。 口や目、耳、脳などが発達し近寄ってきた結果、人類の口は脳の真下にあります。 隣接して存在することは噛むことの影響が、脳や鼻、目、耳などに影響を与えることになったのです。

噛む事以外にも歯の働きはあります。その一つが進化の過程で獲得したコミュニケーションに関わる発音です。 総入れ歯の人が入れ歯を外して喋ると周りではよく聞き取れません。 特にサ行の発音が難しいのですが、これには理由があります。 サ行は歯音といい、前歯の先の上下間にわずかな隙間を開けることで音を作ります。 歯がないと作り出せない音なのです。

50音すべて歯の位置や唇の形、舌の位置がみな違います。 違うからこそ違う音が作れるのですが、歯の影響はほとんどの音で現れます。
会話は進化した動物としての証なのです。

その他にも歯の噛み合わせが骨格の一部として身体のバランスを保つ機能があって、歯は骨格系の維持に働きます。 歯の噛み合せが悪いと、肩こりや腰痛、頭痛などになりやすいと耳にされたことがあることと思います。

歯がみんな揃っていても噛み合せが悪いと体にこのような不定愁訴が起こるのに、右や左の片方だけをいつも使っていたり、歯が抜けたままにしているといろんなものが狂ってきます。 あごのズレから頭の位置、頚椎、肩、腰椎、骨盤、足と全身が歪んでくることもあります。 歯はたかが一本と思いがちですが、されど一本なのです。

また歯は「歯をくいしばってがんばれ!」というように、重いものを持ち上げたり、力を込めることに使います。一度試しに口を開けたまま、重いものを持ち上げてみてください。 力が入らないことに気づかれるでしょう。 このように踏ん張りが利く、がんばれる、力が入るために歯は働いているのです。

噛むことは生きること

食べるということは、生きるということです。そして食べるということは、噛むことです。 流動食で栄養を摂っても人は長生きできません。 噛むという一見意味のないように思える行為が、実は人にはどうしても必要なのです。

人には他の動物と同じように本能というものが備わっています。そして性欲、物欲、所有欲などたくさんの欲があります。しかし齢とともに欲は姿を変えますが、生存本能の形で人生の最後まで残るただ一つの欲が食欲です。

フランス料理の歴史を紐解くと必ず登場する人物で、食通でもあり、フランスの美食の古典ともいえる「美味礼讃」の著者としても有名なブリヤ・サヴァランは、「創造主は、人間に生きるために食べることを強いる代わりに、それを勧めるのに食欲、それに報いるのに快楽(味覚)を与えた」といっています。
生存本能であり人の最後にまで残る食欲、それは『おいしい!』ことでもあります。ダイエットのような努力は何も必要ありません。『噛む』ことさえできれば、誰にでも簡単に手に入れることができる快楽です。おいしい!快楽は、ベータエンドルフィンやドーパミンなどのホルモンの分泌を促し、心と身体にとてもいいことなのです。

不幸にして歯をなくしたら

人の体に無駄なものは一切ありません。 気の遠くなるような長い年月をかけて人類は進化の過程で無駄を省き、必要な機能を満たして現代の私たち人類があります。歯1本といえども必要だから存在するのです。

その歯を不幸にして失うと、今は食事や日常に不便はなくとも、必要なものを失って他の歯に代用させたツケはいつか払わなくてはならなくなります。
そしてその時には元通りに回復できないこと、
今の歯の喪失は次の大きな問題の予兆だとお考え下さい。


噛めない歯をお持ちの方へ

グラグラしている歯をそのままにしておくと、隣の歯までだめになります。 歯がグラグラしているということは、その歯を支えている骨が溶けてなくなったためです。
それでもまだ放置しておくと隣の歯を支えている骨(歯槽骨)まで溶けてしまい、 1本の問題が2本3本と被害が拡大していきます。 一見まだどうにかなりそうで、そう症状がなければやりたくない気持ちが先に立って治療を後回しにしがちですが、 りんご箱の腐ったりんご1個をもったいないと捨てなかったために1箱全部りんごを腐らせてしまうことに似ています。
できるだけ歯を残しておきたい気持ちと、被害の拡大を最小限に食い止めたい気持ちの板挟みですが、これから先の人生を考えなくてはなりません。

こんな症状をお持ちの方は要注意!

・グラグラしている歯をお持ちの方
・噛むと痛いのでその歯を使わないで工夫して食事をしている人
・時折歯肉が腫れるのに忙しいなどとやりたくないことの理由を探している人
・歯を抜いたまま放っておいている人
・ガタガタの歯並びに無理をして銀歯や入れ歯を入れてもらっている人

噛むことの役割

なぜ人には咀嚼(噛むこと)が必要なのでしょうか。それは、噛むことで私達はたくさんの恩恵を得ているからです。ここでその代表的な恩恵のいくつかをみてみましょう。

○食物を飲み込みやすいように細かくする

○消化しやすくする
唾液と供に分泌されるアミラーゼによって食べ物の分解を促進し消化しやすくします。

○胃や腸の消化液の分泌を促す
唾液によって胃酸と膵液の分泌の指令をだします。すなわち噛むことで「これから食べ物が体内に入るから、体に準備をしなさい」と指令が飛ぶのです。

○唾液の分泌を活発にする
唾液はただの水ではありません。たくさんの働きがあります。噛むことによってたくさんのホルモンや酵素が含まれている唾液の分泌が活発化します。唾液分泌の増加はむし歯や歯周病予防に有効です。分泌された唾液によって歯肉や歯の修復・消毒を行い、歯を保護し、食べ物を飲み込みやすい状態にしてくれます。口の中の酸性・アルカリ性度を一定に保つ働きもあります。唾液に含まれるパロチンには老化予防や女性に喜ばれる美肌効果もあります。お茶や水ではこの代用はできませんので、しっかり噛んで十分な唾液を出すことが大切です。

○唾液の分泌を促し食物の味、においを感じる
ビスケットを立て続けに何枚も水分を摂取せずに食べてみてください。味がしなくなります。味覚を感じる味蕾という器官は唾液を通じて刺激が伝わり味覚を感じることができます。特に奥歯の横にある舌には日本食に欠かせない「うまみ」を感じる部分があります。奥歯がなかったり、しっかり奥歯で噛まないと「うま味」を感じることができません。せっかく食べるのにもったいない話です。このようにおいしく食べ、味覚を味わうには唾液が必要なのです。

○噛む刺激が脳に伝わり、脳を活性化
咀嚼は脳の直下にある筋肉の伸び縮みで行われます。この筋肉の運動が血液の流れを活発化させ、それが脳の直下で起こるため脳の血流量も増えるといわれています。よく噛むことで記憶力の増強や感性・情緒・判断力の育成にも効果的で、認知症の改善や予防にも有効と考えられています。

○満腹中枢を刺激して食べ過ぎを防ぐ
よく噛まないで早食いすることは満腹中枢が刺激を受ける前に食べ過ぎてしまうのです。よく噛むことはダイエットにもなることなのです。

食物を噛むとその感覚が歯を支える組織や筋肉から脳に信号が伝えられます。
すると脳の一部で神経性ヒスタミンという物質が多量に合成され、 満腹中枢が活性化されて食べたい気持ちが抑制されるのです。 つまりよく噛めば噛むほど少ない食物で満腹感が得られ、 肥満の防止や健康的なダイエットになるというわけです。 逆に軟かい食物をろくに噛まずに飲み込んでいると、 満腹感が得られず食べ過ぎて肥満の原因になってしまいます。

また、噛むことによって自律神経が刺激されると、脂肪の合成が抑制され、 同時に脂肪の分解が促進されることで内臓脂肪が減ることが最近分ってきました。
いったんつくとなかなか落ちず、健康への悪影響が言われている内臓脂肪が噛むとで減らすことができるのです。

この他にもよく噛むことによって、目のピントを合わせる毛様体筋が鍛えられて視力の向上、肥満や糖尿病との関係を示唆する研究報告もあり、噛むことは私達にとって健康的で楽しい毎日を送る上でとても大切なことなのです。

百寿者の共通点

百寿者と呼ばれる百歳以上の健康な高齢者の皆さんにはいくつかの共通点があります。ポジティブな思考を持っていること、明るいこと、何がしらかの軽い運動をしていること、そして例外なくよく食べます。

このように先ほどのホルモンの分泌が促される生活を送っておられ、日々の中でそれらをうまく利用しています。百寿者がそういう生活を送っておられるというより、そういう生活を送ってきた人だけが百寿者になれる権利を持つことができるようです。

私たちは一日三回、一年365日、十年で一万回以上食事をします。長い人生で噛めることと噛めないことの差がどれだけ大きくなるか、そしてその幸せの蓄積がどれだけ大きいか、ご想像いただけると思います。このように噛むことは私達にとって健康的で楽しい毎日を送る上でとても大切なことなのです。

食や噛む行為の重要性

中国で古来からいわれている『医食同源』を持ち出すまでもなく、食や噛む行為の重要性が最近の科学によって次第に明らかになってきています。
そのためにいかに歯を長く維持できるかが、これからの人生にとって大切になってきます。また年齢の『齢』の字に歯が使われていることからも昔から歳と伴に変化する代表として歯は扱われてきていますが、食べる楽しみや社交性などの積極的な行動、高い生活の質を維持するためにも歯は必要です。

現在の日本は平均寿命が男性79歳、女性86歳という超高齢化社会を迎えています。
一方で健康寿命と呼ばれる自立して生活できる年齢の平均は男性73歳、女性78歳となっており、その両者の差、すなわち男性で6年間、女性で8年間は何らかの介護を受けている現状があります。長寿だけでなく生活の質を重要視する理由がここにあります。

昨今生命の最大の敵となった癌ですが、生活習慣や食生活との因果関係がいわれて久しくなります。危険因子としては喫煙、肥満、痩せ、飲酒、加工肉、塩分摂取、熱い飲食物などがあげられ、一方で予防因子としては運動、野菜や果物の摂取などがあります。
要約するとご存知のように「野菜や果物などの植物性食品を多く摂り、食塩とアルコールを控えめにして、食べ過ぎに注意して、運動をしましょう」ということになります。 「♪わかっちゃいるけどやめられない♪やれない♪」という声も聞こえてきそうですが・・・

口の中の環境は成長期と高齢期に大きく変化します。人は12歳ごろに完成した歯並びを一生持っていきます。そのためにしっかり噛むことを省略した軟食化傾向の子供たちには噛み合わせや歯並びの問題が出てきます。それらによって将来虫歯や歯周病にかかりやすくなるだけでなく、特定の歯に負担がかかってその歯の寿命が短くなるのです。
歯を失うと噛み合わせの上下顎の高さが変化することが多く、顎関節の変形や顎関節症の発症や他の歯への負担が増えてさらに他の歯の寿命を短くするという悪循環におちいっていきます。

さらによく噛まないことは子供の筋肉の成長、高齢者は維持ができないことになります。これが噛む筋肉や顔の表情筋力の低下、感情表現や会話・咀嚼能力の低下、唾液分泌低下による味覚の低下や虫歯や歯周病の発症、舌の筋力低下による誤嚥性肺炎の発症などにつながっていきます。

咀嚼(ものをかむ)の効果

食べものを噛み砕き、すりつぶし、飲み込むことができる状態にする行為を咀嚼と呼ぶことはご存知のことだと思います。食物の咀嚼以外でも、物事や文章をよく考えてその意味を理解する意味にも一般的に用いられます。
食べもの咀嚼には、食物を消化しやすい状態にすること以外にもいくつものよい効果があります。咀嚼により唾液分泌が盛んになり、口の中の修復や免疫に貢献します。このことがむし歯予防や歯周病予防などに働きます。また、脳の活性化や知能の向上、集中力の向上、認知症予防やメタボリックシンドロームの予防などがあるといわれています。

戦後からの食物の軟食化がいわれて久しいのですが、あまり噛まずに飲み込むことはこんなにものたくさんのありがたいことを無駄に捨てていることになります。栄養や消化だけではないのです。
日記や家計簿をつけることなど、どんな習慣でも毎日それを一生続けていくことは本当に大変です。しかし食事をしない日はありません。
こんなに苦労しなくても毎日続けていけることは他にないのです。
労せずこんなにも効果が得られるとはありがたい話しです。
今日からしっかり噛んでおいしく健康を手に入れてください。

噛むことで受けられる恩恵

噛むこと=食物を粉砕すること=栄養をとること、それだけでないことが最近の研究で明らかになってきました。噛むことはたくさんの恩恵を私達に与えてくれます。
運転中の眠気防止にガムを噛むことが有効であることをご存知だと思います。 噛む運動で筋肉の張力が強まって目が覚め、脳の働きが活発化して思考力や記憶力、判断力、注意力などを高めて頭のめぐりがよくなります。

噛むことがストレスを緩和させるために、「やけ食い」になることもよく知られています。 野球の選手が試合中にガムを噛んだり、戦争で兵士がガムを噛むのもこうした理由からです。
ストレス社会に生きる現代人にとって、健康を維持していくためにストレスコントロールとして 「噛み応えのある食事をゆっくりと噛み、楽しむこと」は必須といえます。

岩手医科大学の田中教授によると長期にわたる歯の喪失が学習記憶能力を低下させ、脳細胞に影響するとの報告もあります。 一方で高齢者ほど噛むことによる記憶力増大効果があり、逆にみれば高齢者はよく噛まなければ(噛めなければ)記憶力の減少につながることになります。

このように噛むことと脳機能や認知症との関わりが注目されています。
実際に老人介護施設で入れ歯を新製したり歯の治療をして噛める状態になれば、痴呆の軽減や寝たきりの方の比率の低下、長期入院の減少などの報告が歯科や医科からも多数出てきています。噛むことで筋肉の活動量が増え、脳に近い場所での血流量の増加が原因ではないかと考えられています。

食物を噛むとその感覚が脳に伝えられ、脳の満腹中枢が刺激されて食べたい気持ちが抑えられます。 また噛むことによって交感神経が刺激されると、内臓脂肪が減ることが最近分ってきました。
つまりよく噛むことで少ない食物で満腹感が得られて肥満の防止や健康的なダイエットになり、健康への悪い影響がある内臓脂肪を減らすことができるのです。 逆に軟かい食物をろくに噛まずに飲み込んでいると、満腹感が得られず食べ過ぎて肥満の原因になってしまいます。

またよく噛むことでたくさんのホルモンや酵素、抗菌物質が含まれている唾液の分泌が促進されます。唾液について詳しくは後でお話ししますが、唾液にはむし歯や歯周病の予防効果など私たちはたくさんの恩恵を受けています。

噛む行為は、脳の中枢部である脳幹から指令を受けたリズム性のある筋肉の運動です。 あごを閉じる、食べ物がつぶれる、あごを開ける、舌と頬が歯に食べ物を再度乗せる、またあごを閉じる、という具合に一連の運動をまるでコンピューターのように自動的に無意識の内に行ってくれます。
その上目で見た情報や歯に食物が触れた感触が脳に伝わり、食べ物の大きさや固さなど種類によってあごを閉じる角度・方向を無意識に脳が判断して変えているのです。
右で数回噛めば、今度は反対の左に食物を移動させさらに噛む、こうして左右を移動させながら食物を段々小さく、そして水分と混合させながら飲み込める状態にしていきます。 こんな複雑なことを無意識で行う「噛む」という行為は脳、神経、筋肉、歯、粘膜、唾液、大勢の役者達のみごとなコンビネーションです。

私たちがものを噛む時には、最大で自分の体重の2~3倍もの強い力で噛み砕きます。 こうしたことができるのも、歯はもちろんこの役者たちが丈夫であるおかげです。
裏を返せばこれらのどこかに異常があると成り立たない行為であり、歯を抜けたままにしているとこの一連の作業がうまくいきませんので結果的に『噛めない』ことになります。 歯のない場所だけの問題で収まらないのです。

またこれらを無意識で使う=鍛えることでもあるのです。 入院して筋肉を使わなければ筋肉が細くなることでもおわかりのように、使わないものは衰えていくのが生物の宿命です。噛むという行為はこれらを鍛え、衰えさせない効果があるのです。 口は脳からの命令で動いていますから、噛むという行為は脳への刺激となります。

先ほど述べたように噛むことはたくさんの組織の複雑な連携が必要であり、それらを活性化し老化させない手段でもあります。 つまり、歳をとったからといって軟かい食事にしたり、さして噛まないでのみ込むことは老化を加速することになります。
一口30回を目安に噛んで、老化防止と食べ過ぎ防止に、そして味覚を十分に味わって健康で楽しい毎日をお送りください。

唾液の恩恵

人体には外敵が侵入しやすい入り口がいくつかあります。その中で大きさが最大でかつ最も侵入を許しやすいのが口です。風邪やインフルエンザウィルス、肺炎、コレラ等の細菌、多くの病原体が口を経由して体内に侵入します。

体も侵入をただ許しているのではなく、免疫などで防御しています。
口には抗菌力を持つ唾液を配備しています。口の中の虫歯菌や歯周病菌にも抑制的に働きますが、唾液分泌量が落ちるとその作用が弱まってしまいます。

唾液にはこの抗菌作用以外にも、消化酵素であるアミラーゼが糖分を分解する消化作用、歯や歯茎の洗浄作用、食後に酸性に傾く口の中を中性に戻す緩衝作用などがあります。まるで口の中の門番のような働きです。
ドライマウスなど口の中が乾燥して水分補給をしても、これら唾液の持つ作用はありませんので唾液の代用にはなりません。

健康を左右する唾液の分泌量を増加させる方法は、脳の唾液中枢を刺激することや、唾液分泌する組織である唾液腺を刺激する方法がありますが、最も簡単な方法は「噛む」ことです。唾液腺を直接刺激することができます。

唾液と噛むこと

よく噛むことで唾液の分泌が促進されますが、その唾液には消化作用があることはご存じのことだと思います。 それ以外にも唾液には抗菌物質が含まれており、むし歯や歯周病の予防効果もあります。 動物はケガをすると傷口をなめますが、抗菌(消毒)作用のある唾液の働きを本能的に知っているのかもしれませんね。

また唾液は食後に酸性に傾いた口の中の環境をほぼ中性から弱アルカリ性に戻し維持します。 むし歯がむし歯菌の出す酸により起こることは知られていますが、この酸を中和してくれるのも唾液の働きです。
さらに傷ついた粘膜の修復を助けてくれる働きもあります。 そして口の中が酸性になって歯の表面が侵されてむし歯になるところを、唾液中の成分がカルシウムを補い痛んだ歯を元通りに戻してくれます。

またここで忘れてはいけないのが味覚です。 味覚には、酸味、辛味、かん味(塩辛い味)、苦味、甘味、うま味などがあります。 人の舌は先端で甘味を感じ、両端で酸味を、奥で苦味を、全体でかん味を感じます。 これらの味覚を舌にある味蕾という味を感じるセンサーともいえる組織に伝えているのが実は唾液なのです。
ですから本来の味覚を味わっておいしく食べるには、よく噛んで十分な唾液を分泌させる必要があるのです。口いっぱいビスケットをほうばって噛んでいると段々味がしなくなります。 唾液がビスケットに吸収されて味蕾に味覚が届けられなくなるからです。 一度試してみられるとご納得いただけるでしょう。

また唾液は歯や粘膜など口の中の洗浄や口臭の予防にも働いています。 唾液はたくさんのホルモンや酵素を含み、パロチンには老化防止やアンチエイジング、女性には喜ばれる美肌効果までありますから見逃すことはできませんね。 このように唾液はただの水ではなく私たちの健康にとても貢献してくれている大切なものなのです。

これまで何回かに渡って歯のすばらしさ、噛めることのありがたさ、そして今回唾液の真の姿をお話ししてきました。歯を失くすとこうした恩恵を失っていくことになるのです。

しっかりかんでいつまでも元気に

しっかりかんでいつまでも元気に

意識をしながら噛んでいる方はほとんどいません。脳の中枢部である脳幹からの命令を受けた噛む筋肉が無意識でリズミカルに動いて「噛む」が実現します。

あごは上下に動くように見えますが、実はわずかな円弧を描いており、噛む度に頬と下で歯の上に食べ物を乗せ、唾液を絡ませてそれを左右に振り分けるという非常に複雑な運動をコンピューターのように脳からの指令で行っています。

この複雑な運動は脳だけでなく筋肉や神経など口の周りの組織を総動員して行われます。そのためそのどこかに異常があれば成り立たなくなる、または噛むことはこれらの組織を維持し鍛える働きがあります。

言い換えれば、噛むことは脳を始めこの組織のアンチエイジングなのです。
一口30回を目安によく噛めば少ない量で満腹感が得られ、運動ではなかなか消費できないカロリーの取り過ぎを防ぐ効果もあります。
歯を守り、美味しいアンチエイジングをお楽しみください。

咀嚼(噛むこと)と脳の活性化

ものを噛み、すりつぶし、飲み込むまでの咀嚼という行為が脳の活性化を促すという報告が散見されます。
逆に咀嚼障害は大脳皮質や記憶を司る海馬という脳の一部の神経細胞とシナプスの数を減少させ、記憶や学習能力を低下させます。咀嚼することで脳血流量が増加し記憶促進物質の分泌が促され、脳の海馬や前頭前野、連合野、運動野、感覚野などが活性化されて理解力や記憶力などが改善すると考えられています。
このようなことから、咀嚼は脳機能の活性化に関係しているといわれています。

また味覚の感覚信号が大脳皮質の味覚受容野に伝えられ味が識別されるとともに、視床下部や大脳辺縁系にも伝えられて「おいしい」という感情を引き起こします。
この感情は精神的な和みを与え、全身の自律機能を安定させ、筋肉の緊張を解いて肉体的、精神的なリラックスを生むとされています。

味覚は咀嚼しなければ得ることができないものですから、咀嚼の効果は広く、人間らしく、そして健康で豊かに生きていくためには大切な行為なのです。栄養を流動食で摂るだけでは人らしく生きていけないことがおわかりいただけたでしょうか。
この咀嚼を司るのが「歯」です。歯を大切にしていただきたいと思います。

噛めることは脳への快感/ベータ・エンドルフィン

皆さんの人生の目的は何でしょうか。
毎日を幸福に楽しく生きることもその目的の一つではないかと私は思っています。人は楽しいことや気持ちのいいことは大好きで、中でも快感は最大の喜びです。

快感状態は私たちの脳の中で、鎮静剤として使われるモルヒネと同じ働きをするベータ・エンドルフィンが分泌され、脳を活性化させています。美しい景色や芸術に感動したり、スポーツを楽しむなど脳への快い刺激でドーパミンが分泌され、脳内でベータエンドルフィンが分泌され、脳の前頭連合野に働いて人は快感を感じます。
前頭連合野 は創造性や意欲などを担う場所で、この刺激は精神的な豊かさを生んでくれます。

最も手軽なベータエンドルフィンの分泌は、「おいしい!」です。それも一日に何度も、年間に換算して非常にたくさんの分泌に貢献してくれます。
これを担うのが噛むことであり、歯なのです。

マラソンなど、体力を使い果たした極限状態で、それまでのつらさや苦しさが消えて、心身ともに軽く、非常に気持ちがよくなる状態をランナーズ・ハイと言います。
脳内に麻薬に似た物質が分泌された結果と言われていますが、この物質は体が自分で作りだされたものですから、体内に蓄積することもなく、必要がなくなれば自然に吸収されてなくなります。また体を壊すこともありません。
本当の麻薬のように外から薬物として体内に入れたものは、体の要求でなく反自然的なものですから体を壊す方向に向いていってしまいます。
ベータエンドルフィン も体内から分泌される物質です。

歯と食物繊維、奥歯を大切に

食物繊維自体は吸収も代謝もされないため昔は栄養素に含まれない時代もありましたが、今では大変重要な成分です。最近のレポートで食物繊維の摂取量が多いほど、出血による脳卒中と動脈硬化と血栓による虚血性脳卒中のリスクが少なくなると発表がありました。
食物繊維の摂取量が1日7g多いだけで脳卒中リスクが7%低下したということですから、日常の食事にほんの少量追加するだけでその恩恵を受けられるというのです。
無理して大変な思いをする食事療法と違って、取り組みやすいことでしょう。

食物繊維を多く含む食材は比較的噛む行為が必要な食材が多く、奥歯がしっかりしていないと噛むことができません。見栄えや格好のため前歯を大事にしても、奥歯を日陰者扱いするのは大きな間違いです。人も生物であり生きて食べるため、食物繊維に限らず栄養素と呼ばれる体にとって必要な栄養を摂っているのはほとんどが奥歯です。食は健康の入口であり、口は食の入口、歯は口の入口なのですから、奥歯でしっかり噛んで楽しい食生活をお送り下さい。

どうして噛めないのか

噛むという行為は上下の歯がちゃんと合わさって成り立ちます。ハサミの二つの刃がちゃんと合わさっていなければ切れないことに似ています。噛み合わせや歯並びが悪い、歯を失ったままにしている場合には本来の噛める能力より劣ってしまい十分に噛むことはできません。

また噛むとグラつく歯や柔らかい歯茎の上に乗っかっただけの入れ歯は、噛み合う相手がグラついて逃げていくので本当はしっかりとは噛めていないものなのです。
自分ではしっかり噛んでいるつもりでも、そんな弱った歯で噛むと歯が壊れると脳が認識するため、脳は途中で力を抜くように筋肉に指令を出して歯を守ろうとします。これも結果的に『噛めない』になります。

日本人が発見した『うま味』という味覚がありますが、それを私たちは奥歯の横の舌の側面で感じています。肉を奥歯でギューと強く噛みしめることで肉汁がにじみ出てはじめて感じ取れるものなのです。
すなわち『うま味』を味わうには、びくともしないしっかりしとした奥歯が不可欠なのです。

噛めないとどうなるか

しっかりとした自分の歯があった時代には微塵も感じていなかったことが、歯を悪くしたり歯をなくして初めて体験することがあります。噛めることもその一つです。
噛めないことは噛むことによる利益を失うことです。咀嚼能力が落ちて栄養摂取上の問題もありますが、食べる喜びが減少することで1日3回1年365日、どれだけの楽しみを棒に振っているのでしょうか。
「よく噛めないし食べてもおいしくないから食べることに興味がなくなった」 「外食は食べられるものばかりではないから出かけるのが億劫になった」 「口元が貧弱になった」 「口の中に自信が持てず、人に口元を見られたくない」 「気分まで老ける」などのお話しを日常よく伺います。

歯をなくしたらできないことが増え生活の質が低下するだけでなく、発音や骨格の維持に支障をきたし、肩こりや頭痛、腰痛などの不定愁訴を抱え込んだり、重いものを持てない、踏ん張りやガンバリがきかないなどが起きることもあります。

また噛むことと脳機能や認知症との関わりが注目されているように、脳の血流量の減少と共に活性化が十分に行われず思考力や記憶力、判断力、注意力などが低下してしまいます。
さらに内臓脂肪の増加を促して、肥満や生活習慣病の温床にもつながります。
スポーツ選手が試合中に、また眠気覚ましにガムを噛むことは知られています。噛むことはストレス解消や脳の働きを活発にしてくれます。噛めないことは、この逆の効果が出てしまうことになります。視力や運動機能も劣ることが分かっています。

またたくさんのホルモンや酵素、抗菌物質が含まれている唾液の分泌が減少するために、味覚に影響がでたり、酸の中和力や粘膜の修復能力、口の中の洗浄や口臭予防などの働きが悪くなります。
免疫力の低下を招き感染症や病気にかかりやすく、またむし歯や歯周病にもかかりやすくなります。
こうしてまた他の歯を失い、さらに噛めなくなりまた歯をなくす悪循環に陥ることになります。

こうした色々のできないことが増えれば日常生活への満足度が落ち、人は自信を段々持てなくなってきます。これが他人とのコミュニケーション量の低下、外出など行動力の低下、社交性の低下などを招き、百寿者の明るく元気でよく喋りよく食べる姿とは対照的な姿につながることがあるといわれています。

このようにたくさんのマイナス要因を『噛めない』ことはもたらします。そして噛む能力の高い高齢者は医療費の支出が少ないという調査結果からも、噛めることは健康の条件ともいえます。
噛むことは食べ物を咀嚼することだけではないのです。噛むことで私たちはたくさんの恩恵を知らぬ間に受けています。 とても大切なものなのです。

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