虫歯と治療

歯を失う原因の一つがむし歯です。
これまでその存在すら意識していなかったのに、痛んだり問題が起きて初めてその働きやありがたさに気づくことがあります 。歯をもっと大事にしておけばよかったと思っても、過ぎてしまったことは仕方がありません。
元の生活に戻ることだけでなく、二度と同じことが起きないようにするかが大切です。
そうお考えの方のためのページです。
原因と予防に関しては「虫歯予防」「虫歯の原因」をご覧ください。

むし歯になったら

むし歯になったら

残念ながらむし歯は進む一方で自然に治ることはありません。
もし今痛みやしみるなどの症状がなくても、できるだけ早く治療されることをお勧めします。いや、症状がない今だからこそまだ間に合うのです。

その症状が出るということは、バイ菌は歯質を通り過ぎて歯の神経にまで到達したサインと捉えていただきたいのです。火事になる前の「ぼや」のうちならまだ消火器ですみますが、歯に症状が出たことは火災報知器が鳴って教えてくれている状態です。もう消火器では間に合いません。急いで消防車を呼ばなければならないのに、どうしようかと考えているのと同じです。

一旦歯の症状が出て神経にまでバイ菌が侵入して感染すれば、神経は元に戻らない弱い組織であるために、一般的には神経を取る治療が行われています。
神経を取ってしまうと歯は血流を絶たれてもろく、割れやすくなり、その後差し歯を入れようが、どんな治療をしようが、歯の寿命は確実に短くなります。私は大きな財産が目減りしたことと同じだと思います。詳しくは「歯を削らない!神経を取らない!」をご覧ください。

ですから痛みやしみがないと安心するのは大きな間違いで、今治療しないと取り返しがつかなくなることをご理解いただきたいと思います。もしそうした症状がすでに出てしまった方も急いでください。
何はともあれ早く受診されることをお勧めします。

むし歯の治療とは

むし歯

むし歯のまま放置すればどんどん奥の方にバイ菌が侵入してむし歯は大きくなる一方です。そうならないようにするために、むし歯になった部分を削り取ることで歯質に入り込んだバイ菌をすべて除去し、それ以上むし歯が広がっていくのを食い止める治療が必要になります。
できることなら歯を削らずにバイ菌だけ薬でやっつけられれば理想なのですが、現時点では確実に進行を止めるために、むし歯になったら歯を削るのはこうした理由です。

上の写真では歯の一部だけがかけていて、そのかけた部分だけがむし歯のように見えると思いますが、下のレントゲン写真では歯の内部の少し黒くなった部分すべてがむし歯になっていることがわかります。
歯の上面(かみ合わせ部分)の歯質の厚みがほとんどないので何かの拍子で一気に歯が割れて崩れ、歯の根っこだけの姿になる一歩手前です。
むし歯を取り残せば再発しますので、治療すればほとんど歯の頭の部分が残らない状態です。さらに後ろ側のむし歯が歯ぐきの下、さらに下のあごの骨の位置まで進んでいますので、かなり重症です。

同じような状況の歯をお持ちの方が、抜歯といわれて困惑してお見えになることがよくあります。ご本人は歯の一部が欠けただけでひどく痛んでおらず穴をふさげばいい、と軽く考えている中での抜歯の宣告に納得がいかず、確認のためのご来院です。
拝見すると見た目に反して歯が相当重症であることと、無理を承知で治療しても噛むという本来の仕事をこなし続けるだけの力を失いかけているほど傷んでいるためその診断も一理あります。
虫歯には見た目と実際の大きな乖離がよくあります。

この症例は細菌感染があごの骨まで進行していたため、根の内部の治療から始めました。丈夫な歯に戻せた訳ではありませんが現在は食事をすることができています。厳しい歯でしたがなんとか延命できました。

こんな状況になるまで大きな症状がなかったため、むし歯に気づいていても放置していた反省から今では定期検診にお通いになられていらっしゃいます。この歯がご本人の意識の変化を生むきっかけになり、この歯が他の歯を救っているとも考えられます。この大きなむし歯も無駄ではなかったと感じています。

この症例を離れ、お話しを虫歯治療に戻したいと思います。
できるだけ歯を削るのは最小限にしたいのですが、むし歯を取り残せば再発しますので、当院では見た目の判断だけでなくむし歯だけ色素が残る特殊な薬液やレーザーでむし歯の取り残しがない最小限の削り方を行っています。

その後はむし歯を削った穴を何かで埋めてふさぐ必要があります。
穴の中に食べ物が詰まるだけでなく、削った歯質は歯の傷と同じなので、傷は感染に非常に弱くそこからバイ菌が入り込みまたむし歯になってしまうからです。

またむし歯の大きさや場所によって削る量が変わってきます。
穴が小さい場合は詰め物、穴が大きかったり残った歯質が薄くなって強度が不足する場合はかぶせ物が必要になります。

詰め物にはプラスチック樹脂、金属やセラミック製があります。
プラスチック樹脂は保険対応でご負担が少ないことと、色合いが歯に近く目立たないことから一般的に多く実施されています。
しかし強度不足のため耐久性に問題があります。またむし歯の穴が奥歯の噛む場所であれば摩耗するため噛み合わせが狂う可能性があります。

虫歯を削らずレーザーで除去する治療法やカリソルブという薬剤により虫歯を溶かす治療法があります。 一部でも歯を削るのであれば両者を使う意味がありません。
レーザーと聞くだけで最新の治療法と聞こえますし、虫歯を溶かすため歯を削らずに済むとはすごいメリットがあるようにも聞こえます。
しかし当院では両者の治療を行っておりません。
なぜならばどの方法を用いても虫歯を除去することに変わりはなく、歯を削らずに済ませようとすれば虫歯を除去して開いた穴を先ほど述べたプラスチックで詰めるしか方法がないからです。
強度や耐久性が劣るプラスチックを使えば、将来また歯の治療が必要になります。 何度も治療が必要になることが最初から分かっているのにこの両者の治療を導入する気持ちになれないことが理由です。

金属製のものは保険対応のものと貴金属を使用した自費対応のものがあります。保険対応の一般的に銀歯と呼ばれているものは材質が歯より硬いため噛み合う相手の歯が摩耗したり、人の歯は使えば変化していくものですが硬いために他の歯と調和して変化していかないことが問題点です。また精度よく作ることができないため歯と銀歯との境目に微量の食べかすが残りやすくむし歯の再発がよくあります。

こうした銀歯の欠点を補い、歯と同じ硬さで他の歯と同じように変化する調和のよさと、歯との境目をピッタリ合わせてむし歯の再発を防止する精度のよさ、さらに金属であるための耐久性を兼ね備えた貴金属が昔から奥歯の治療ではベストとされてきました。

しかし今は金属を見せることを避け、自然感を求める時代になってきました。そこで登場してきたのがセラミックです。
開発当初はこれも硬すぎたり割れやすかったりして見た目以外のメリットがありませんでしたが、現在は大幅に改良され貴金属に代わって奥歯の治療に欠かせない存在になってきています。銀歯の精度の問題からくるむし歯再発や硬さの問題、そして金属が目立つ見栄えも解決できます。
プラスチック樹脂は不自然な白さですが、セラミックはどこが歯でどこがセラミックか分からないほど自然なレベルに進化してきています。
近年プラスチック樹脂の強度を向上させた強化プラスチック樹脂(ハイブリッドセラミック)も登場しましたが名前にセラミックとつけてはいるものの本物のセラミックではなく物性も中途半端なものであまりメリットを感じません。

私はできるだけ歯は削らない方が歯が長持ちすると考えています。
ですから虫歯になってしまったものは仕方がないとして、できるだけ一度の治療ですませることが大事だと思っています。 将来再度治療が必要になりまた歯を削る可能性のある治療法は避けた方が得策だと思うのです。
そのためには一度目の治療で見た目だけでなく、耐久性や物性、虫歯の再発を防ぐために歯との間に隙間を作らない精度などが必要だと考えています。

また一般的に歯を削る量が多ければ歯と人工物の接着面積が広くなり外れにくい傾向にあり、歯と人工物との境界線を目立たない場所に設定できるため審美的には優れる傾向にあります。
しかしそれでも歯全体を削って被せる方法より、詰め物や歯に乗せるだけの一部の治療で済ませられるのであればその方がいいと考えています。
ただしすでに歯を削って被せ物が入っている場合や、噛む力が強く外れやすいケース、審美性を優先したいお気持ちなどがあればそれぞれのメリットとデメリット、ご希望などをご一緒に検討して治療法の決定をしていくことにしています。画一的な考え方は持たずに診療にあたっています。

むし歯の大きさや場所によっては詰め物では補いきれない場合はかぶせ物が必要になります。歯の表面を詰め物より広く人工物が覆い被さるものです。

残念ながらむし歯がひどくて歯を残すことができなかった場合は、歯を失った場所を放置しておかないことをお勧めします。まだ他の歯で噛めるからと甘く見ていると他の歯に悪影響を及ぼして、ひいては他の歯の寿命を短くしてしまう可能性があります。
歯を失った後のこうした問題を解消する治療法にブリッジ入れ歯インプラントなどの選択肢があります。

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